話すこと・聴くことで仲間がいる!と力づけられた2日間
2024年6月29日(土)・30日(日)に、パタゴニア日本支社と共催で、Charities Aid Foundation America (CAF America)の助成を頂き、パタゴニア日本支社の環境助成金プログラムの助成を受けて活動している2チーム11人に対してオンラインワークショップを開催いたしました。
今回のワークショップに参加しているチームは、地域の貴重な自然や生物を守り、後世に残していくための活動をしている点が共通していました。ワークショップを通じて自分たちの活動に深く向き合うだけでなく、活動する地域は異なれど、近い価値観や関心を持っている他の参加者の日々の悩みや活動に対する思いに触れ、刺激を受けることで、明日からの活動への活力や勇気をお互いにもらっている姿が印象的でした。
他の人の話を聴くことで、お互いの持つ価値観の違いと重なりに気づくことができた
1日目は、コーチング、ストーリー・オブ・セルフ、関係構築、リーダーシップチームの構築を学びました。
コーチングのパートでは、質問や言い換えを通じて、個人が自身の課題を見つけ解決策を考えられるように支援する手法を学びました。最初のワークで何をしていいかとまどう参加者もいましたが、「自転車に乗る感覚」を大切にして転びながらでも前に進んでいこうというコーチの声かけに勇気づけられながら積極的に学びを深めようと取り組んでくれました。
参加者からは「普段はアドバイスしてしまいがちだったことに気づいた。アドバイスをしないで質問をすることで、相手が抱える課題が早いスピードで見えてくる」という学びの共有がありました。
ストーリー・オブ・セルフでは、価値観が感情を介してつたわると人は行動したくなるということを学びました。演習では、現在の活動への原動力がどこから来ているのかを過去の自分自身の経験を振り返りながら探り、困難を感じた状況やその際の選択、その結果得られた希望や価値観を一貫したストーリーとして語ります。参加者からは他のチームの人のセルフを聴きながら、自分たちの置かれている状況と重ねて共感し、行動するエネルギーをもらえたという感想を聴くことができました。また、「いつもはここまでじっくり皆の話を聞けていない。1対1でもこうやって話せていくと気持ちがほぐれていきそう」や「普段活動を一緒にしている他のメンバーからも思いを聞いてみたい」など、今後自分たちの活動の中でも使っていける手応えを感じていることも伝わってきました。
関係構築とリーダーシップチームの構築では、まずは一対一で、その後チーム全体で価値観で繋がる関係を築くための演習に取り組みました。共有する価値観、関心を見つけ出し、その関心事り、同じような価値観でも話を聞いてみると違うなということに気づけたりしました。チーム毎の演習では価値観として出た「豊かさ」というキーワードに対して、それぞれが自分の考える豊かさや価値観を共有しながら議論を白熱させていたのが印象的でした。そんな中でも「共有する価値観」が見つかったことで「ベクトルが揃い、活発な活動になりそうで楽しみだ」という感覚を抱くこともできました。
リーダーシップチーム構築の最後ではチームの一体感、エネルギーを高めるための「チャント」づくりにも取り組みました。自分たちの活動のシンボルとなる生き物の名前など、心を一つにできる言葉を取り込み、全身で表現をしました。難しい議論に限られた時間の中でとりくみ、疲れも伺えるメンバーでしたが、チャントを通じて一気に表情が明るくなったのを感じます。
1日目全体の振り返りでは「他の人の話を聴くのがすごく気づきにつながる」「普段活動していて、当たり前だと思っていたことにも、コーチの素朴な質問で気付かされることがあった」という感想が共有されました。また、各演習の内容だけでなく、時間を決めて取り組むという姿勢など、自分たちの活動に活かせそうなポイントをたくさん見つけていただけたようです。
戦略や思いを言葉にし、共有することでパワーにつながるということを実感できた
2日目は、戦略、パブリック・ナラティブ(ストーリー・オブ・アス、ストーリー・オブ・ナウ、ストーリー・オブ・セルフをつなげたもの)について学びました。
戦略の演習では、前半に困難に直面する「同志」は誰かを定め、その困難が解決された状態を「戦略的ゴール」として設定し、そのゴールに至るためにどのように働きかけるかの「変革の仮説」を立てていきます。後半にはそのゴールを達成するための具体的な「戦術」のリストを作り、最後に自分たちの「キャンペーン」として発表を行います。頭をフル回転させるハードな演習ですが、自転車に乗りながら社会を変革させる具体的な手法を体感しながら学んでいくコミュニティオーガナイジングの醍醐味の一つです。
自分たちの地域を取り巻く課題の構造や、巻き込みたい人たちの顔を具体的に思い浮かべながら課題に臨む参加者の姿がパタゴニアのワークショップならではの光景で、参加者の本気度に引っ張られてコーチや講師の熱量もどんどん上がっていきました。最後に各チームで練り上げたキャンペーンの発表を聞いた時には「楽しそう!」「遠くてもぜひ現地に行って参加したい!」という声が飛び交いました。
2日目の最後の演習はパブリック・ナラティブで、1日目に考えたストーリー・オブ・セルフとこの場にいる「私たち」の共有する価値観を語る「ストーリー・オブ・アス」、今どのような緊急の課題がありどのような変化を起こしたいかを訴えかける「ストーリー・オブ・ナウ」を結びつけて、目の前にいる人にアクションを求めるためのストーリーを作ります。
2日間で自分自身の価値観や、誰のどんな課題を解決したいと思っていたのか振り返ることで、自分の活動の原点に立ち帰りさらに感情がこもったストーリーを聴くことで目頭を熱くしながら、語りかけることの力を改めて感じることができました。
自分たちの大切にしている価値観を信じ抜いて駆け抜けた2日間!
2日間の学びを通して、最後に共有してもらった参加者からの声をいくつかご紹介します。
- 問題解決をするための方法論を学べるワークショップはなかなかない。活動をしているとチームの中で分断が起きたりするがそうならないように学んだことを生かしていけると思う。今の活動は多くの人が仕事でやっているわけではないし、いろんな形で参加している。いろんな人の、いろんな違いをまとめてやっていくことが、成し遂げたいことを実現するためにも必要だなと思った。
- 考えや思いを言葉や文字にすることでこれからの具体的な行動が明確化してきた。言葉を共有することでパワーにつながるということを実感できた。
- 自分の中で断片的だったことを整理できた。また、他のチームの方々の話を聞いて仲間がいる!と力づけられた。
- 価値観を共有することと、誰もが想像できるゴールの設定が大事だと感じた。同志が誰なのかをよく考える必要があることを学んだ。同志が変わるとアプローチ方法も異なってくると思った。
2日間駆け抜けてくれた参加者の皆さま、お疲れ様でした!
頭も心もたくさん使って、とてもハードな2日間だったと思いますが、「早速持ち帰って自分たちのチームで実践したい」と具体的なアクションを共有してくれた顔はとても晴れやかでした。明日からの自分たちの活動にも希望や手応えを感じてもらえたのはとても嬉しい限りです。
今回参加してくれた2チームには、これからもCOJとしてパタゴニア日本支社と連携しながらコミュニティ・オーガナイジングの実践の伴走をしていきます。ぜひ実践のなかで一緒に学びを深めていきましょう!
レポート:矢野夏樹(コーチ)