2025年2月15日(土)、16日(日)に第12回目のオンラインワークショップを開催いたしました。市民団体、各種法人・組合、医療機関など、異なる背景を持つ様々な地域にお住まいの参加者27名と運営スタッフ23名が、コミュニティ・オーガナイジング(以下、CO)を学びました。
ワークショップのスタッフをやってみようと思った理由
今回、初めてコーチとして関わりました。ワークショップに参加したのが2024年の2月。一年後、まさか自分がコーチとして関わっているとは思ってもみませんでした。参加してからの1年間、COを通していろいろな人と出会うことができ、学んできたことをアウトプットしたいと思い、今回、コーチとして関わることを決めました。
結果として、アウトプットするだけでなく、改めて学ぶ機会をもらったような感覚です。
価値観でつながり、チームとなる
COのワークショップは、COの考え方や手法を講義で聞き、実践を通して学んでいく構成になっています。
1日目は、お互いの価値観を共有し、チームを作るプログラムになっています。自分が大切にしていることや、その基になった経験を、質問によって引き出し合い、共有していく中で、いつの間にか初対面のメンバーが一つのチームになっていきます。

質問で引き出す、は意外と難しい
最初に学ぶコーチングでは、5つのステップや手、頭、心の観点から、相手の考えを引き出す質問をしていきます。
しかし、これが意外と難しいのです。参加者は、相手が何を考えているのか、自分は次にどのように進めたらいいのかを意識しながら質問を投げかけなければなりません。
ワークの後、参加者からは「やってみると難しい!」「頭が疲れた!」「落ち着いて聞けなかった!」といった声が多く聞かれました。ここで質問する姿勢を身に付けていくことが、この後のワークの基盤となっていきます。

ストーリー・オブ・セルフを語る
コーチングの後は、個人的にCOで最も重要だと思う、ストーリー・オブ・セルフの時間です。コーチが語るストーリー・オブ・セルフも参考にしながら、参加者は自分の中で大切にしていること、そしてその価値観とつながる経験を、同じチームのメンバーに具体的に語ります。
短い時間の中でまとめられるものではありませんが、コーチの質問に応えながら、参加者それぞれが自身のストーリーを語りました。コーチたちも何度も修正を重ねてストーリーを作り込んでいることも、コーチになって初めて知ったことです。
大切なことは、経験した場面の情景を相手がイメージできるように語ることです。最初は初対面の人にどこまで話していいか分からず、緊張感も漂いましたが、参加者からは
- 「聞いてもらえてよかった」
- 「聞いてもらえたからこそ、安心感が生まれた」
- 「自分の中で大切にしていることが何かを改めて考える機会になった」
という感想も出てきました。ストーリーで語ることは、相手の感情に訴えかけることでもあります。練習していけば、自分が何かを決断する場面、新たなチャレンジをする場面、仲間を見つけていく場面など、きっと様々な場面で役に立つと思います。

同志は誰か、同志の課題は何か
2日目は、チームが目的を達成するために、同志(課題に直面していて、一緒にゴールを達成した人々)と共に何をするのか、どのように行動していくのかを、参加者全員で情報や意見を出し合いながら進めていきます。一緒に課題解決していきたい同志を具体的に挙げ、ゴールを設定し、達成していく流れ(=キャンペーン)を作っていきます。
2日目も各ワークの要点と具体例を講義で確認しながら、演習を通して学びました。 参加者は、自分たちが普段、支援している相手や、共に課題に向き合う人を多く挙げることはできても、その人たち自身が自らの力で課題を解決し、活動をより大きなものにして、目的を達成するための計画を立てる方法は、なかなか学ぶことはありません。
2日目のワークでは、同志は誰なのか、同志が何を求めているのかを整理し、ゴールに向けて、どんなやり方でゴールを達成していくのかを学びます。

エネルギーが湧き出るキャンペーン
そして、設定したゴールを達成するためのキャンペーンのタイムラインや具体的な戦術を検討する時間は、とても創造的で楽しいワークになりました。お互いのアイデアや資源を掛け合わせることで、本当にゴールが達成できると思える、エネルギーが湧いて来そうだと思うキャンペーンがいくつも生まれ、ゴールを達成するまでのタイムラインになりました。
参加者からも、「本当にやろうと心の底から語り合えたから、やりたいと思った。」という感想を聞くことができました。

学びを咀嚼し、言葉にする
2日目の後半は、パブリック・ナラティブを学び、語ります。各チームから一人ずつが、チームのキャンペーン、自身の価値観、参加者全員が体験してきたことをストーリーとして語りました。

語ることで、自分たちのキャンペーンが、自分とチームにとって、そして、このワークショップの参加者にとっても意味があることだと伝えるのです。
オンラインのワークショップでは、なかなか参加者が一堂に会して話すことが難しいのですが、それぞれが同じワークを経験してきたこともあり、各チームの発表後は多くの人がチャットやリアクションで声援を送りあいました。
お互いに、「ここまでたどり着いたことに、おめでとう」と、「一緒に頑張ってくれて、ありがとう」そして「これからも頑張ろう」という声を掛け合っているような雰囲気の中で、不思議な一体感が生まれました。
コーチとして関わって、2日間、いろいろあった中で、一人ひとり、咀嚼しながら得たものを言葉にしていくのは、本当にすごいなと思いました。
一人ひとりのチャレンジと、チャレンジを応援するということ
一年前の自分がそうだったのですが、参加された皆さんは、あっという間に二日間が過ぎていった印象を持たれていると思います。
コーチとして関わって改めて気づいたのは、参加者一人一人が自転車を一生懸命漕いでいること、チャレンジしていること、そして、そのチャレンジをコーチをはじめ、スタッフ全員が支えているということです。
コーチは参加者の答えを一緒に見つけていくことしかできません。関わる中で各ワークの意味やポイントをできるだけ寄り添う形で伝え、ゴールに辿り着けるように一緒に取り組みます。参加者の人数に対してコーチの人数が多いことは、このワークショップの特徴だと思っていますが、参加者一人一人と向き合い、フォローしていくには必要な人数なのだと感じました。
価値観でつながると、グッと距離が近づく
また、ワークショップのポイントについては、我々は価値観に基づき、つながりを作っていくのだと再認識できました。ワークショップにはさまざまな動機、背景、関心を持った人が集まります。そんな人たちがチームになり、キャンペーンというアウトプットを作れたのは、「自分のことも、相手のことも大事にする」、「未来をもっとよくしていきたい」、「今を変えていける可能性を自分たちが持っている」という価値観をみんなが持っているから、つながりあって出来たのだと思います。
自分の価値観を伝え合うことはなかなか難しいことでもありますが、伝わった、繋がった!と感じられると、途端に相手との距離がグッと近くなり、自ずと何を自分たちでやっていくか?が見えてきます。この感覚は、ぜひ覚えていてほしいと思っています。
次回、コーチとして参加する際にも、参加してくださる方たちが価値観でつながり、キャンペーンというゴールに至れるように、一人一人に、向き合っていきたいと思います。
レポート:古川貴啓(コーチ)