コミュニティオーガナイジングを地域福祉実践に活かす(金田喜弘 2019年4月ニュースレターより)

 「リーダーシップとは、他者が不確実な状況の中で目的を達成できるようにする責任を引き受けること」コミュニティオーガナイジング(以下、CO)のワークショップの初日、この言葉を聞いた時に私は心が大きく揺さぶられました。

 私は地域福祉実践に関する研究をしており、そこでの社会福祉専門職、特に社会福祉協議会(以下、社協)の役割について関心を持っています。ソーシャルワークでは地域を基盤とした実践を進める際に、コミュニティワークと言われる社会福祉援助技術が用いられます。COの考え方や手法が地域福祉実践にも活かせられるのではと思い、2016年にワークショップに参加しました。

 COでは、当事者(同志)がスノーフレークを形成しながら各々がリーダーシップを発揮しネットワークを生み出します。そして当事者が抱えている課題を明確にし、解決に向けて戦略を立て実践しています。このプロセスや視点はコミュニティワークやソーシャルワークの展開過程を重なる部分が多いと感じました。

 今日、日本では一人暮らし高齢者や障がいがある方の暮らしづくりや、ひきこもりの方の生活支援、子どもの貧困など様々な生活課題が横たわっています。当事者の想いや願いに耳を傾け、その人を中心に据えながら地域住民と共に解決に向けた取り組みを展開する際には、このCOが効果的であると確信しました。これまで地域福祉実践は連綿と全国で取り組まれてきました。しかし、そこでの要素や軸が体系化されていない(あるいは体系化しづらい)という課題がありました。COは一定、それを体系化したことで「職人技」から学べば誰でも用いることができる「普遍的」な手法に転換したことは大きな意味があると思います。これまでの実践にコーチングやパブリックナラティブ、関係構築や戦略などのモジュールが重ねあわせることでさらに大きな力になると思います。

 現在、ワークショップを受講した社協ワーカーのメンバーと共に、これまで進めてきた実践をCOの切り口で分析を行なっています。COの考え方は大いに役立つと言いましたが、そのまま全てを使い切るのは難しいこともわかってきました。日本の風土や文化・歴史と切り結びながら再整理することが求められると思います。この学びの蓄積が、社協にとどまらず、それ以外の実践の指針になるものができればと考えています。一方で、関西には社協だけではなく、多様な団体や想いを持った方々がすでに受講しています。具体的なゴールは様々ですが、誰もがより良い社会を作っていきたいと願っています。COを共通言語として関西のエリアで組織化し、これまで受講した同志の応援と、さらなる実践の広がりを目指して動き出していきたいと思っています。


金田喜弘
プロフィール

2019年度活動報告①

みなさんこんにちは。事務局長の安谷屋です。
2019年度は、こちらのスタッフブログでNPO法人コミュニティ・オーガナイジング・ジャパン(以下COJ)の活動実施報告をしていこうと思います。今回はその1回目で、2つの活動について報告します。

【1:Ready& 2019 HIGH SCHOOL SPRING PROGRAM

  • 主催:Ready&
  • 開催日時:2019年4月21日(日)10:00~18:00
  • 対象:高校生16名
  • 開催地域:東京都港区
  • COJの関わり方:プログラム設計にCOJフェローのシゲとカヨが関わり、当日はカヨがメイン講師、COJ常勤スタッフのアダニーがワークショップフォローとして参加
  • 内容:Ready&はCOJのWS参加者で2019年2月のCOJ主催WSでコーチも務めたナナミが主催する団体。今回の企画は、
    「皆さん、自分らしい自分が好きですか?自分を知る。ストーリーを発信する。仲間と繋がる。ジェンダーや当たり前に縛られない1-Dayプログラム」というもの。
    ストーリー・オブ・セルフとストーリー・オブ・アスのワークショップが組み込まれていました。
    ストーリーを語った後の参加者の声をいくつか紹介します。
    「人の話を聞いたときに、経験や教訓から、自分の意見に改めて気が付くことができた。ディープな話を共有できたことで前に出ることも恥ずかしくないし、つながりを感じられた」
    「前に出て話すときのコツを学んだ。実体験まぜて話すと風景浮かんでうまく想像できて、聞く人も飽きずに聞ける。これから使いたい」
    「人間はみんな違う意見を持っていて、それを人に伝えた方が良いと思っている」
    「新しい考え方の人に出会いたいと思って参加。普通の学校生活だけの経験では会えない人が多くて楽しい時間」

【2:大町青年会議所4月例会「The Reader~真のリーダーになろう~」コミュニティ・オーガナイジング・ワークショップ】

  • 主催:一般社団法人大町青年会議所
  • 開催日時:2019年4月21日(日)13:00~17:00
  • 対象:大町青年会議所メンバー10名
  • 開催地域:長野県大町市
  • COJの関わり方:COJ常勤スタッフ松澤が講義とファシリテーションを担当。大町青年会議所のオーガナイジングリーダーシップ向上委員会と相談しながら中身を設計
  • 内容:理事長の田中麻乃さん(白馬村議会議員)がCOJ主催WSに参加されたことがきっかけで開催。機能するチームの条件、想いを共有する関係等について対話を交えて学んだ後、メンバー同士でペアを組み一対一の関係づくりを体験するものでした。
  • 理事長田中さんによる開催報告(大町青年会議所Facebookページより抜粋して転載):

    「一昨年の12月に、
    友人に勧められて一泊二日の研修を受けてから、
    私の議員活動含めて基礎になっています。
    今年度理事長を受けるにあたり、
    JCメンバーにもCOを使った組織作りを意識して欲しいという思いもあり、
    オーガナイジングリーダーシップ向上委員会で企画していただきました。

    日頃なかなか話せないメンバーの背景や思いを共有することが出来て、更に距離が近くなれたと感じています。

    他人事から自分事へ変化する方法としてのCO。
    1人1人の力は小さいかもしれないけど、自分らしさを活かして、色んな人を巻き込みながら大きな力にし、
    困難や課題を皆んなで解決していく。
    JCメンバーが、地域にとってそんなリーダーになっていけたらいいなと思っています。」

    ※大町青年会議所 団体HP http://www.omachijc.com/ Facebook https://www.facebook.com/omachi.jc/

今回の報告は以上です。
お読みいただいたように、主催者がどのような目的を持ち、対象者(参加者)に何を持ち帰ってほしいと思っているか、その後のチーム(組織)をどうしていきたいかによって、内容や進め方は様々です。COJでは、2日間で5つのリーダーシップを学ぶ「フルWS」以外の形でも、COに関心を持って使いたい、広めたいというみなさんとともに、学びの場を作っていきたいと思っていますので、お気軽にご相談ください。
また、例年実施しております、COJ主催の2日間のWSも準備中です。確定次第募集告知いたしますのでもう少々お待ちください。

(COJ事務局長 安谷屋)

横浜市市民活動支援センターの情報誌animato VOL.26(Spring2019)に掲載されました

「(animat VOL.26)自分との向き合い、人との向き合い~コーチに聞く、コミュニティ・オーガナイジングで得られたものとは~」

横浜市市民活動支援センターの嶋田さんにご紹介いただき、2018年度、同センターの事業でコミュニティ・オーガナイジングを学ぶ場づくりをしました。その場を一緒に作った福士浩さん、久保田裕輝さんが、COJ副代表理事の松澤とともにインタビューに受けた記事です。

COJのワークショップに欠かせないコーチとして、多大な資源を提供してくださっている福士さんと久保田さんが、どんな思いを持ってCOJに関わっているか、松澤はそういうみなさんとともにどんな風に活動していきたいかをそれぞれ話しています。ぜひご一読ください。以下、本文からの抜粋です。

(本文より抜粋)
久保田:主体性を持つことは時としてKY(空気を読まない
)に捉えられてしまうのが残念です。KYが格好いいと思えるような社会にしたいし、自分も正直に「大切だ」と思ったことをやり続けたいですね。
松澤:何かを「変える」というと大それたことに聞こえがちですが、そこに暮らし、学び、働く人誰もが「当事者」なんですよね。誰にでも生活者であることを活かし、周りの人の力を引き出しながら、地域や課題のために何かをする力があると私は信じています。
福士:様々な困難を抱えた人たちがお互いに尊重しあって生きていける社会を僕は目指したいです。そのために、安心して自己開示して自分のことを振り返って向き合って、そして他者に伝えられる場をつくりたいし、その作り方をレクチャーしたいです。

(事務局長 安谷屋)

第100回ピースボートクルーズ乗船レポート②

ピースボート乗船レポート②は、地球大学ゼミについて報告します。

地球大学はコーディネータがゼミ生の学びをサポートし、講師を担当する水先案内人との調整も行います。コーディネータのおふたりとは100回クルーズ出航前に2度、東京都内で打ち合わせをして、

コーディネータのおふたりと

「地球1周で感じた課題に対して『何もできない』ではなく『これならできそう』という思いを持って船を降りてほしいね!」と話しました。そこで、ゼミではどうやってその課題に対して行動するか、コミュニティ・オーガナイジングの戦略の立て方を基に、実際に戦略を作るワークを取り入れ、そしてそのワークの結果を発表する場も用意しました。

乗船3日目の16:30が私のゼミスタートでした。10代~30代のゼミ生との顔合わせです。そこから4回の内容が以下です。

1回目:
・【講義】全体像(4回のゼミを通して何をしようと思っているか)を伝える
・【全体共有】(予め作ってもらったチーム毎に)チーム名とどんな社会を目指したいかを表した「共有目的」の発表
・【講義】「機能するチーム」について

カーペット敷きのセミナールームで終始リラックスムード

・【全体ワーク】ゼミの進め方の「ノーム(グラウンドルール)」づくり

2回目:
・【講義】「コミュニティ・オーガナイジングにおける戦略とは何か(前半)」(事例「青空が欲しい」を読み解きながら)
・【グループワーク】「戦略的ゴール(目指す社会に近づく最初の目標)」づくり…私たちの同志は誰か、同志はどんな困難に直面しているのか、同志が力を合わせたらどんな変化が起こせるか
・【グループワーク】(機能するチームになるために)グループ内での役割分担

3回目:
・【講義】「コミュニティ・オーガナイジングにおける戦略とは何か(後半)」(事例「青空が欲しい」を読み解きながら)
・【グループワーク】関係者分析…戦略的ゴールを達成するために、どんな関係者がいるか。関係者はそれぞれどんな関心と資源を持っているか

大きな課題を手触り感のあるゴールにするためにみんなで考えます

・【グループワーク】「オーガナイジング・センテンス(いつまでにどうやって戦略的ゴールを達成するかを表す一文)」づくり…同志の力をどう使うと、メンバーが目指す社会に近づく最初のゴールが達成できるか

4回目:
・【講義】「コミュニティ・オーガナイジングにおける戦術とは何か」(ピースボート小学校5年生になって考える)
・【グループワーク】戦略的ゴール達成までのタイムライン作成…自分も参加したくなって友だちも誘いたくなって、より人々の力を集められる戦術とはどういうものか、同志の力が高まるタイムラインになっているか
・【グループワーク】「同志が困難に直面している絵」と「戦略的ゴールの絵」作成

予備日程を使って4グループが
①オーガナイジング・センテンス
②同志が困難に直面している絵
③ゴール達成のタイムライン
④戦略的ゴールの絵
を完成させ、さらに言語対応が必要なので発表原稿を作り上げました。また、グループワークには加わらなかったものの、ゼミ生として学び続けたGさんが司会を担当することになり、その司会原稿も出来上がり、下船まであと1週間ほどとなった3月26日に「Think global,Act local 地球大学最終発表」が行われました。船を降りれば住んでいる場所が離れていたり、学生・社会人など生活リズムも違ったり、そんな自分たちが具体的な戦略など立てられるのか、というところからのスタートでしたが、ワークを進めるうちに、「これホントにできそうだね」という実感が持てたり、「ドイツに留学していたとき、デモはなんだか楽しそうだったけれど、日本ではそうじゃない」という気づきを共有するメンバーがいたりしました。ひとりではできないことをみんな(同志)の力を合わせて行動するために、具体的にどのような手順で何を考え、作れば良いのかを、みんな真剣に学びました。その結果を発表すると、会場の200人ほどのみなさんから大きな拍手が起こ

発表の最後に全員がステージ上に

り、報告会後「もっと大きくメディアに取り上げてもらうには」とアイディアを下さる方や、「応援したいのだけれど、どうやって彼らの取り組みを見つければ良いの?」と質問してくださる方もいらっしゃいました。また、かつての地球大学生で今はピースボートのスタッフをしているEさんは、「ふわっとした発表ではなくて、いつ、どこで、誰が何人で何をする。あそこまで具体的に考えられていて驚いたし、本当にできそうと思えた」と感想を話してくれました。
4グループの発表資料、ぜひご覧ください!

発表の翌日、地球大学ゼミ最終回があり、ゼミ生が1人ひとり語った言葉は全部ここで紹介したいくらい、彼ら自身の成長を表すものでした。ほんの一部ですが紹介します。

・みんなで学んでいる感じがすごくよかった。同じ地大生は陸に降りてからも「こう考えているかも」と思える仲間がいると思えることがすごく大きい
・友だちができた。例えばレインボーパレード行くにしても誰かを誘えるのは大きい。今までは個だったけれど、これからは「つながれる」という希望がある
・もとから知っていることも多かったけれど、そのことについて話せる空間と仲間がいることが大きい。有意義だったかどうかをほんとうにわかるのは今後。ここで会えた仲間は一生の仲間。これからもつながっていきたい
・世界平和に対して「みんなが幸せになる世界なんて作れないよな」という気持ちが沸き上がったけれど、ゼロにしちゃいけない。何もしなければ何も変わらない。アクションを続けることで、100にはならなくても100には近付ける。物足りないものはいくらでもあるけれど得られたこともたくさんある。日本に帰ってもこういう場所を自分が提供したい

第100回ピースボートクルーズ地球大学プログラムに関われて、とてもしあわせです。私もみなさんとこれからもつながっていきたいです!ありがとうございました。

地球大学EndingCeremonyにて

安谷屋貴子(COJ事務局長)

2019年2月23-24日、第11回COJ主催コミュニティ・オーガナイジング・ワークショップを開催しました!

2019年2月23日(土)〜24日(日)、市ヶ谷の(株)ビービット東京オフィスにて、コミュニティオーガナイジング・ワークショップを開催しました。 COJが主催する東京でのWSは累計11回目。2018年度は8月に第10回を開催していて、今年度2回目です。
集まったのは、医療やジェンダー、格差や貧困などに課題意識を持つ35名。北は北海道、南は九州まで、全国各地から参加がありました。

  

土曜の早朝、知らない場所、知らない人ばかりの中で最初は緊張した雰囲気がありましたが、全体の約束事をみんなで決める場面では色んなアイディアが出て、静かな意欲の高さを感じました。

非常にタイトなスケジュールの中、全体での講義と6名1班でのチーム演習を繰り返します。 「活動分野も、所属も、年齢も性別も全然違うメンバーで、最初はどうしようかと思った・・・」 そんな不安の中、少しずつ自分の経験や価値観を伝え、お互いに交換することにチャレンジし、共感を積み重ねていきました。

「それ!わかる!」「つまりどういうことなんだろう?」「こうしてみよう!」を悩みながら繰り返し、1日目の最後にはチームで共有目的とチャントを作り上げました。

2日目はチームで作り上げた目的を実現するために、戦略を立て、オーガナイジングセンテンス(キャンペーンの全体像を示す一文)にまとめていきました。
「さっきはこう言ったんだけど、やっぱりちょっと違ったかも・・・」 迷った時は最初に作った目的と、それに共感した自分たちの思いに立ち返りながら、少しずつ、アクションの方向性が見えてきます。

実際に自分達チームのオーガナイジングセンテンスを他のチームに伝えて意見交換したり、アクションへの協力を依頼するロールプレイも行い、「確かにそこは抜けてたかも」「こうやって伝えると良いんだ!」と、たくさんの気付きが得られました。

最後には、みんなの前でスピーチ。自分の思い、この場への思い、そして叶えたいこと、協力してほしいこと。それぞれがそれぞれの思いを込めて語り、会場の全員が密度の濃い2日間を振り返ってじーんとしました。

怒涛の勢いで最後まで走り抜けた2日間。 「自分のことを話すのは勇気が必要だったけど、たった2日間で深いチームになれたことに驚いた」 「自分では何でもないと思ってたことが、目的達成のための資源になると気付かされた」 「みんなの話を聞いて共感したし、仲間がいることがわかって勇気が湧いた」

さまざまな学びを得て、それぞれの場所に戻っていった参加者のみなさん。2日間で体験した様々な困難とそれに立ち向かう方法、そして仲間の存在を得て、物事の取り組み方や受け取り方がほんの少し、変わったのではないかと思います。

わたし自身も、人は違ったままでも繋がれるし、変わることができるのだと、改めて体感することができました。 そして、教えてくれた参加者のみなさんのチャレンジ精神に多くの勇気をもらったと感じています。 この体験を心の支えに、今後の活動に繋げたいと思います。 本当にありがとうございました。

竹下 萌 (コーチ)

 

 

 

第100回ピースボートクルーズ乗船レポート①

2019年3月13日~4月1日まで「水先案内人」として乗船し、「全体向け講座(75分)」を2回、「ストーリー・オブ・セルフ(私の物語)を作るワークショップ(70分)」を1回、「地球大学ゼミ(90分)」を4回、実施しました。そのレポートを2つに分けて行います。①では全体向け講座とワークショップについて、②では地球大学ゼミについて報告します。

このクルーズは2018年12月26日に横浜港を発ち、17の寄港地をめぐるものです。また「SDGs」をテーマに掲げ、気候変動や貧困について、寄港地での出会い、船上でのプログラムなどを通して学び、考えられる、そんな作りになっていました。

私はそのクルーズの最後から3番目の寄港地であるタヒチから乗船し、洋上期間が長いことを活用し、およそ100日間でインプットしたことをどう、船を降りてからの実践につなげられるのか、そのための方法を学ぶ場づくりが主な使命でした。ストーリーの力と戦略を学ぶ場を作り、「船を降りたら食べ残しは絶対しないようにする!」のような「個人でとりあえずできることはやるけれど、この旅で感じた課題解決にはつながらないような気がする…」という状態ではなく、「できるかも!」という思いを持って旅を終えることができる状態を目指しました。

全体向け講座は1回目でコミュニティ・オーガナイジングの概要と実践事例(岩手の「まんまるママいわて」の事例を今回も使わせていただきました!)を話しました。一人ではできないことを、「スイミー」のようにみんなの力を合わせて成し遂げるには何が必要なのか。ストーリーの力を「ジェームス・クロフト」さんの動画で実感し、雪の結晶のように広がる、一人だけががんばったり力を持っていたりするのではない「スノーフレーク・リーダーシップ」が今まで足りていなかった要素だと気づいた、実施後に数人の参加者と話してそんな感触を持ちました。

2回目では、ストーリーの力に焦点を当て、人は行動するとき、認識的な理解と感情的な理解が必要で、その感情的な理解を引き出すのがストーリーであること、そのストーリーの構造や作り方を話しました。また、1回目の参加者かつ地球大学のゼミ参加者でもある20代のJさんに、ストーリー・オブ・セルフを作ってもらってコーチングして、2回目の講座の中で発表してもらうこともできました。この旅を通して「“はし”渡しプロジェクト」を個人的に実施したJさんは、人と人のつながりを大事に思っています。なぜ、いつからそう思うようになったのか、そのきっかけになった出来事はいつで、誰がいて、どんな気持ちだったか。次々に私が投げる質問に根気強く考えて、200人ほどの参加者の前で語ってくださいました。

予定にはありませんでしたが、実際ストーリーを作ってみる場があった方が学びが深まるということで、急遽ワークショップを、2回目の講座の後(別日)、実施しました。12人が参加し、3人グループでお互いのストーリーを聞き、質問によるコーチングをし合う場でした。また他の企画と重なって参加できなかったというKさんとSさんのふたりに、補習を行うというおまけも。Kさんは、船内で「毛筆で漢字を1つ。思いを残しましょう」という企画を運営していたのですが、用意してきた半紙がなくなってしまったり、書いた人みなさんに作品を返すときに一言メッセージを付けたり、「どうしてそこまでやるの?」と周囲が思うくらい一生懸命でした。ストーリー・オブ・セルフを作ることを通して、「なぜ自分がそうまでしてやり遂げたいのか」を考え、そう思うようになった経験を詳細に語ることで改めて、「この企画、最後までやり遂げよう!」と思うことができたと話してくださいました。

ピースボートの全体講座のほとんどが、日本語、中文、英語に対応していて、スピーカーが日本語の場合は同時通訳、英語の場合は逐次通訳、スライドも3画面でそれぞれの言語で表示されます。そのため、事前に「CC」と言われる通訳チームとの打ち合わせがあり、講座内容を共有します。それがだいたい講座の2日前くらい。そして講座では、打ち合わせで共有していないことは話さず、早口にならないように話す必要がありました。これは、いつも時間を気にして早口になったり、その場で思いついたことをよく話す私にとっては、少しだけ窮屈でした(笑)。また日本語文化圏以外のみなさん向けにお話しをするのも初めての体験でした。

ピースボートでもレポートを作成くださいました。良かったら合わせてご覧ください。レポート②に続きます…

ほづみゆうき(穗積勇起)

ワークショップに参加した動機は?

わたしの参加した動機は2点あります。1点には、わたしが所属している子育て当事者の声を政治や行政に働き掛ける市民団体である「みらい子育て全国ネットワーク」がCOの手法を取り入れて活動しており、ミーティングの際にも「ストーリーオブセルフ」だったり「スノーフレーク」といったCOのキーワードが飛び交っており、団体の活動により深く関わっていくためにこの手法をより深く理解したいという思いがありました。もう1点は、わたしが個人として行っている活動をより広めていくための現状の評価と改善方法の見極めでした。わたし自身の娘が待機児童になりかけたことをきっかけに在住している東京都中央区の行政に関する記事をブログやSNSで発信をし続けてきましたが、理屈っぽい主張が主であることからか主張の相手先である行政はなおのこと、同じ問題意識を持っている人たちの心を動かすにも至っていないのではないかという課題意識があり、それを改善するためのきっかけが得られたらと考えたのでした。

ワークショップに参加した感想は?

研修が開始してから1時間も経たないうちに、嫌というほど自分のこれまでの活動のマズいところが浮き彫りになってきて、デトックス効果は抜群でした。特に、自分の活動に足りない部分は感情に訴えかける部分、つまりナラティブの部分であると思いこんでいましたが、戦略部分でも関係者の分析やゴールの設定など、いくつもの足りない部分を認識することができました。
 中盤からはグループに分かれて、そのグループの中の誰かのテーマを取り上げて具体的に戦略を考えるというワークショップを行いました。わたしのテーマが取り上げられたわけではなかったため、これまで自分があまり深く考えてこなかった問題に対して、そしてそもそもこれまで経験のないCOを用いた戦略策定やアクションの設計を行うという取り組みは二重の苦しみがありました。
 しかしながら、具体的なテーマを用いて一連の作業を行ってみることで、より詳細にCOの考え方を理解することができたように思います。また、扱っている中身や対象者は異なるにしても、より深い価値観の話になってくると共通する部分が生まれてくるという気付きもありました。具体的には、わたしたちのチームが対象としたのは「両親共働きで孤独な新宿区の小学生」であり、わたしの問題意識にある「待機児童」とは異なるわけですが、「社会の仕組みや価値観で抑圧されている人」という意味では共通するのです。
 

今まで参加してきたワークショップとの違いは何ですか?

これまで経験したワークショップとの大きな違いは「濃密さ」で、これには2つの意味があります。1点には時間的な意味で、土日両日、朝9時から19時半までみっちりと研修(しかもタスクや発言の際には常にタイマーで縛られる過密スケジュール)、その後に懇親会というこれまで経験したことのないハード過ぎる内容でした(また、家庭を持つ身としてはパートナーにワンオペ育児を2日続けて依頼することになるので事前の調整も必要でした)。疲労感は翌日の仕事に差し支えるくらい半端ないですが、この短期間で集中して行うからこそのワークショップに対しての高揚感や勢い、そして達成感もあったように思います。
 もう1点は、コーチの配置という意味で、6人のグループにコーチが2〜3人付くという非常に贅沢な体制でした。ワークショップで各タスクを進める際にグループのメンバだけではその意図や進め方がよく分からない場合も多々ありましたが、そのたびにすぐに助けを乞うことができました。また、発言した際には常にその直後にコーチからの問いかけやフィードバックが得られるので、言いっぱなしで終わるのではなくすぐに軌道修正できたのはありがたかったです。
 

コミュニティ・オーガナイジングを今後の活動にどう活かしたいですか?

まずは、この研修の振り返りとして自身の活動を題材としてガイドブックを見返しながら一連の作業をやってみています。今まで気付くことのなかった足りない部分を補った上で、設定したゴールに向けてアクションをしていくというのが目下のチャレンジです。
 また、すでにCOの手法を取り入れている「みらい子育て全国ネットワーク」のメンバとしては、これまでの活動内容や関係者分析などを振り返ることで、さらにこの活動が多くの関係者を巻き込み、より多くのことを成し遂げられるよう、今後も貢献していきたいと思います。
 さらに、COの「市民の力で自分たちの社会を変えていく」という考え方は、本業であるNPOの仕事にも活かすことができるようにも思われました。わたしが所属している認定NPO法人フローレンスは「親子の笑顔をさまたげる社会問題の解決」をミッションに掲げています。社会課題の解決には現行の制度を司る行政だったり、活動資金を提供してくれる寄付者だったりとの関係構築が不可欠ですので、こちらへの活用も模索していきたいと考えています。

堀場 万生

ワークショップに参加した動機は?

今回もコーチとしてワークショップに参加していた、職場の先輩から誘ってもらいました。
日ごろは、地球一周の船旅を使った国際交流を目的とした教育プログラムや、社会課題に関心を持つきっかけを持ってもらうイベントを作る仕事に携わっています。その中では「社会課題を解決するために私にできることは何か」という問いかけが常に付きまといます。コミュニティ・オーガナイジング(以下CO)は “「支援者」ではなくて「当事者」目線でコミットする”姿勢を大切にしながら、市民社会からムーブメントを起こす手法だと先輩から聞き、その姿勢そのものや人への喚起の仕方をぜひ学びたいと考えました。
また、自分が特に重きをおいている「対話性に開かれた歴史認識構築のためのプラットフォームをつくる」という社会課題についても、COから何か重要な糸口が得られるのではないか、という思いが、ワークショップへの参加の気持ちを下支えしました。

ワークショップに参加した感想は?

本当に疲れました。(笑)
次から次へと出てくる新しい知識との遭遇、そしてその演習と発表の繰り返しに「とにかく付いていかなきゃ…!」の気持ちで走り続けていたら、いつの間にか2日間が経っていました。
限られた時間で沢山の人と言葉を交わし、心を交わす中で、相手への共通価値観の探り方や、コーチングの観点、チームの中での役割や仲間への寄り添い方などが、自分もチームのみんなもどんどん磨かれていく手ごたえが驚くほどにありました。それもこれも、コーチのお二人をはじめ、スタッフの皆さんが「転んでもいいんだよ!みんな自転車を最初から乗れないように」と(まるで体育用マットを常に横で持ちながら伴走してくれているようでした。)支え続けてくれたからだと思います。それはもう、じゃんじゃん転びました。
目標を達成するための本当の“同志”は誰なのか?という根本的な問い。どんなアクターがどんな意図で何を目的に動くのか、という分析。やる気や時間など、今まで自分が“資源”だとは思ってもみなかったものすら、ムーブメントの達成のためには重要なカギであるという気づき。
エッセンスが凝縮されたプログラムをこなす中で、日々の活動で意識してこなかった、とても重要な視点の数々を学び得ることができたと感じています。

今まで参加してきたワークショップとの違いは何ですか?

これほど実践的だと感じるワークショップは初めてかもしれません。
「休みの日なのに、朝早いなぁ眠いなぁ」と思いながら電車に乗ってワークショップ1日目に向かう私は、「COを学ぶ」という目的意識しかありませんでした。しかし、初めて会う(ともすればこの2日が終わるともう一生会わないかもしれない)6人とのチーム演習を何度も重ねていく中で、それぞれが抱える課題や想いに真剣に耳を傾け言葉を交わすにつれ、どんどん信頼関係が結ばれていったと思います。2日目が終わるころには、「同じチームで、大切な友人である〇〇さんの職場環境の改善のために、どうか話を聴いてくれ…!」という一心で、穴ぼこだらけの“パブリック・ナラティブ”を涙ながらに発表するまでになるなんて想像だにしませんでした。はー、恥ずかしかった。
コミュニティ・オーガナイジング・ジャパン(以下COJ)のワークショップの魅力とは何か?COJが提供してくれるCOの学びの質がとても高く2日間で学び取る価値あるモノが沢山詰まっていたことは最早言うまでもないですが、このワークショップを一緒に作る35名の参加者とコーチの方々がそれぞれ抱えているイシューに対して「どうにかしたい!」と思っている本気さが持ち寄られ、その本質を対等に語り合うことができることこそが、他のワークショップではなかなか得られない希少さではないでしょうか。

コミュニティ・オーガナイジングを今後の活動にどう活かしたいですか?

ワークショップに参加した後2週間ほどが経ちますが、さっそく職場をはじめとして様々な場所でCOで学んだ観点を思い出しながら話すようになりました。相手の意図、価値観、懸念点などをいち早く引き出すために、“コーチング”・“関係構築”の手法をよく使っている気がします。共通認識をもつためのコミュニケーションが、今までより少しはスムーズにできるようになったかな?これからも鍛錬を続ける所存です。
日本で生活する中で気になる社会課題を挙げればきりがないように、世界中を航行し異なる国・地域に住む人達に出会えば出会う程、彼らも同じように日々何かの社会課題に直面している事を知ります。地球社会にはびこる紛争、貧困、差別や環境破壊……手に余る課題の数々に頭が飽和状態になり投げ出したくなる感覚に陥ることもあります。そんな時だからこそ、それぞれの来し方には尊敬しつつもそれを超えたところで、「平和に過ごしていくために、これが大切だよね!」という共通の価値観で、彼らと心を交わし手を繋ぎたい。「あなたとわたしの大切なもの」で繋がれるCOのメソッドは本当に有用だと思います。
ひとまず、来月4月から始まる100日間の洋上勤務の中で、地球一周する1000人の参加者のうちの一人でも多くの方と“価値観”で繋がるために、COのアイディアを存分に使いながら、社会課題の解決にコミットする仲間を沢山つくろうと考えています。そのための“パブリック・ナラティブ”、急いで作らなきゃですね。

コミュニティ・オーガナイジング・ワークショップ・WS in ふくしま を開催しました!

2019年2月2~3日に「コミュニティ・オーガナイジング・ワークショップ ふくしま」を、NPO法人いわて連携復興センターの主催で、福島県福島市の「福島市市民活動サポートセンター」にて開催しました。

終了後の集合写真

 

今回は、岩手・宮城・福島の3県をメインに、こども食堂の実践者や行政職員の方、子ども支援をしている方など35名の方々にご参加いただきました。早割の段階で満員御礼、キャンセル待ちが出るほどの盛況ぶりで、熱くなりそうな雰囲気が始まる前から感じられました。

誰かの気づきはみんなの気づき。みんな真剣に聞いています。

2日間、朝から晩までびっちりと分単位で進んでいくワークショップ。開始時は、「何をやるのかよく分からない」という声がちらほら聞こえ、緊張感と不安と、そしてコミュニティ・オーガナイジングに対する期待がありました。私たち運営チームも深い学びを提供したい、その一心で一緒に臨みました。

不安も言葉にして共有。

私たちは「自転車に乗ること」を大切にしています。講義を聞くだけではなく、自転車に乗ってもらい、実践の練習をするのですが、その中でも、自分の価値観を語るストーリー・オブ・セルフは大きな勇気が必要だったと思います。お手本として、運営チームの一人が2分間で語るのを見て、皆さんの「え?これをやるの?」という不安げな表情。

 自分が大切にしていることを、経験を辿りストーリーとしてまとめ、はじめましての方に、あるいはよく知っている人に話すのは、勇気がいりますよね。数チームから代表で発表してもらいました。「後悔したくない」ことが原動力になっている人、「人のためになら動きたい」と思える人、いろんな大切にしていることが出て、温かい拍手が起こった時、この学びの場が成功することを確信しました。

チーム毎の発表の最後は「チャント」で締めます!

2日目は、チームで共有する価値観をベースに戦略を立てました。住んでいる場所も、行っている活動も、持っている関心が違っていても、さらには年齢だって違っていても、価値観を共有することができればチームが作れることを学んでいただく機会となりました。

 怒涛の如く流れゆく時間に追われながらも、どこのチームも脱落することなく、最後まで自転車に乗り続けられたのは、参加者の皆さんで関係を築けたからだと思います。

イメージを絵に描くとチームとして目指すものが一層明らかになります。

最初から最後まで学びに貪欲だった今回のメンバーは、ワークショップ終了後もコミュニティ・オーガナイジングのスキルを学び続けていくことになりました。何事もそうですが、自分たちで復習や応用をしなければ身につきませんもんね。一緒に頑張っていきたいと思います!福島組は3月3日に勉強会を早速します。
 さらには、20代~30代で勉強・実践をしていきたいという声もあり、こちらも少しずつ進行中。また、報告できれば嬉しいです。
 「やりたい」って思ったことは、どんどん声に出して、実行することが大切だという私自身の気付きもありました。学ぶだけでなく、日常でも活かせるように今回のメンバーと勉強会の場を作っていきます。

 ここまで、お読みいただきありがとうございました!!

レポート:木山侑香(ワークショップ運営チーム)

宮﨑 恵美

ワークショップに参加した動機は?

Facebook広告を偶然拝見したことがきっかけでした。
「市民が自ら立ち上がり持てる力を結集し地域の課題を解決していくリーダーシップ養成プログラム」という文字が私の目に飛び込んできました。その時、所属団体の継続の不安、チームビルディングや私自身のリーダーシップが上手くいっていないといった苦悩に苦しんでいた私にとって、このコピーは私の悩みにジャストフィットしたと感じました。このワークショップ(以下WS)に参加することによって、今の悩み、組織の課題に何か光が見えるような気がして、すぐに申し込みました。

ワークショップに参加した感想は?

気づきあふれるWSでしたが、どれか1つと言われたら、みんなの前でセルフストーリーを語る機会をいただいた時のことだと思います。私は自分のこれまでの個別的な人生を誰かに話すということを躊躇していました。それは、相手に重荷を背負わせるような、申し訳ないような気持ちがあったからです。しかし、拙い私のセルフであっても、大きくうなずいてくださる方が沢山いらっしゃいました。「勇気づけられた」、「心が動いた」とおっしゃってくださった方もいました。涙された方もいました。でもそれは重荷を背負わされた人達ではありませんでした。そこには、私の価値観を共有し、共感してくださり、応援してくれるみんながいました。今回の経験を通して、私自身が私の過去に新たな意味を見出すことができたと感じましたし、今後、然るべきタイミングで私自身の経験を踏まえた想いを伝えていこうと思えるようになりました。

今まで参加してきたワークショップとの違いは何ですか?

WSの最初に、「このワークショップでは、いくつかの手法を学びますが、学んだだけでは身はつかないので、実践を通して『型』を覚えるんだよ。」というお話がありました。そのお話の通り、講義で手法の説明を聞き、ファシリテーターの皆さんがその手法を使ったやりとりを見せてくれて、その後に時間制限を設けながら、自らも経験するということの繰り返しでした。
他のWSでは、講義だけで終わるもの、また一部の手法だけで終わるものが多いと思うのですが、このWSでは、誰か1人の想いが、共感を集め、チームとなり、大きなことを成し遂げられるという一連を学ぶことができるということが、最も特徴的で、他にはないWSだと感じました。
一連を学ぶことによって、自分の活動の見通しのなさに光が見えたのだと思います。

コミュニティ・オーガナイジングを今後の活動にどう活かしたいですか?

今回のWSに参加し、改めて自分の関わる活動を振り返った時に、自分はチームのみんなの想いをどれくらい汲めているのだろうか?また、自分の行動の裏側にある想いをどれだけ伝えてきたのだろうか、という問いに対し、全く不足していたということに気がつきました。WSが終了してからの約1か月、私は今、チームのみんなとの対話を重ねる努力をしていて、その成果を感じ始めています。失敗もしています。しかし、この取り組みの全てが、私たちの成長につながっていると確信しています。私たちの挑戦はまだまだ始まったばかりですが、ミッションの達成に向けて、チャレンジし続けたいと思います。

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