2022年12月17日、18日の2日間でオンラインによる「全労連(全国労働組合総連合)ゆにきゃんコーチ養成講座 コミュニティ・オーガナイジング・ワークショップ」が開催されました。
※全労連が2020年11月から取り組んでいるコミュニティ・オーガナイジングを学ぶ「UnionCamp(通称:ゆにきゃん)」のコーチ養成を目的として取り組まれました。
これまでの労働組合の「お作法」にとらわれず、希望を持てる労働運動を進めたい
今回のワークショップの開催に向けて、8月よりコアチームを立ち上げ、「これまでの労働組合の『お作法』にとらわれず、希望を持てる労働運動を進めたい」という思いを共有し、準備を進めてきました。その中で、誰に参加してほしいか、どんな変化を作りたいかなどを話し合いながら参加者リクルートを進めました。
そんな中で「労働組合の活動に女性の参加が少ないよね」「いつも女性の参加増やそうって言うけど、言葉だけになってるよね」「女性参加者が少ないとチームで安心して発言できないよね」という思いも出し合い、参加者の半数以上を女性にすることを目標にし、どうすればそれができるのかなど具体的に話し合った結果、参加者は女性17人、男性16人となりました。
合言葉は「チャレンジを応援しあおう!」
全国的に急激に寒くなり、大雪も心配される中、ワークショップが始まりました。北海道から沖縄まで全国の仲間がオンラインでつながり、初めはみなさん緊張してソワソワしている様子でした。参加者のみなさんが2日間、学びを深められて安心して参加するにはどんなノーム(グラウンドルール)が必要ですか?と問いかけると「オンラインなのでリアクションをしよう!」「分からないことはちゃんと聞こう!聞きやすい雰囲気にしよう!」「否定から入らない!」など、次々と出てきました。開始直後から早速お互いのチャレンジを応援し、受け入れ合う雰囲気になりました。
1日目初めの講義は「コーチング」。3人1組に分かれての演習では、失敗してもいいんだよ、自転車に乗ってみよう!とたくさんのチャレンジであふれました。
2日間を一緒に走り抜ける6人のチームに分かれてからは、自分自身の活動の原点を「ストーリー・オブ・セルフ」で語り、チーム内でペアに分かれ「関係構築」しました。「普段の活動内容や場所が違っても、根っこにある思いは同じだったんだ」「自分のことを話すのが苦手だったけど、たくさん質問されたことで一気に距離が近づいた」「とっても難しいけど安心してチャレンジできた」という声も聞こえてきました。
1日目の夕方にはチームの中で仲間意識と笑顔があふれてきた
1日目の最後は「リーダーシップチーム構築」でチーム全員が価値観でつながり、誰とどんな活動をしたいのかを話し合い、魅力的な共有目的を作りました。チームで活動するためのノームや役割、チーム名とチャントを決めました。
1日目を終えての全体での振り返りでは「価値観を共有することでチームが一つになっていく実感を持てた」「何歳になっても学ぶ権利はある。演習がうまくいかなくてもコーチやチームメンバーが支えてくれたのでチャレンジできた」「普段の組合活動の中でいかに質問していないか、気持ちを聞けていないかを実感した」という感想が出され、画面上でみんなが「うんうん」と頷く姿が印象的でした。
同志の資源って何だろう?同志の力を引き出せてる?
2日目は「戦略Ⅰ」から始まりました。キーワードは「同志」。同志の絞り込みでは労働組合の役員目線での想像ではなく、困難に直面している現場の当事者目線を意識してみよう!ということが講義の中でもコーチからも何度もくり返されました。
当事者の持つ資源を合わせ、パワーを生み出すことが大事で、普段の活動とも比較し難しさを感じながらも、同志が立ち上がり課題を解決するための「戦略的ゴール」を決めました。そして、どうすればそのゴールが達成できるのか「変革の仮説」を立て「オーガナイジング・センテンス」を作って、チーム同士のコーチングも行いました。
各チームで決めた戦略的ゴール達成するためにどんな戦術が必要なのか。「戦略Ⅱ」の講義では参加者からたくさんのアイデアが出されました。
「戦略的ゴールを達成する助けになってますか?」「同志の資源を使ってみよう!楽しくワクワクする戦術、誘いたくなる戦術の視点で!」との質問に、次々といろんなアイデアが出され、キャンペーンタイムラインを作成し各チームから発表がありました。
思いがあふれ、希望を感じることができた「パブリック・ナラティブ」
あっという間に2日間の集大成となる「リンキング」(ストーリー・オブ・セルフとアスとナウをつなげる)の演習になりました。チームで作ったキャンペーンの戦術に誘いかけるためのストーリーを学びました。
なぜ、私たちは今この行動をしなければならないのか、なぜ私は立ち上がろうと思ったのか、1日目に学んだストーリー・オブ・セルフも取り入れ、35人の参加者全員がチームに分かれ最後のチャレンジをしました。
演習のあと、全体で各チームから1人ずつ発表があり、ストーリーに込められた思いや希望に心を動かされ、参加者もコーチも講師も涙を流しながら気持ちを共有することができました。
具体的なアクションやその背景にある思い、そして変えるための道筋を語ることで参加者からも「私も参加します」「そのアクションなら私にも出来るのでやります」と次々に心が動かされ、行動へ移る瞬間がたくさんありました。
価値観でつながる実感が湧き、楽しくわくわくする活動をしたい!
2日間のワークショップを通じて、困難をたくさん見てきた労働組合の人たちだからこそ、1人ひとりが大事にされ、働く人たちの命を守るために活動をしていることに共感が広がり、現場の力を生かす運動に変えていく希望が広がったと感じています。2日間のワークショップを通しての参加者からの振り返りでは次のような声が寄せられました。
- 初めは自分自身の話をすることに苦手意識があったがチームに受け入れられ安心して話せる場があった。価値観でつながる実感が湧き、自分のことを話したいと思えた
- 自分自身の中の、弱い立場の人を守りたい、1人ひとりが尊重される社会にしたいという気持ちに改めて気づくことができた
- 現場にいる1人ひとりの力を引き出し、楽しくわくわくする活動をするために明日からも頑張る!
- 普段寄り添っているつもりで実は現場に課題を押し付けていることに気づけた2日間だった
- ナラティブをいかし現場の声を発信する工夫を早速したい、組織内の会議でも2日間学んだことをいかしていく!
- 何歳になっても学ぶ権利はある、成長し続ける権利はある。この2日間で学んだことを必ずいかし変えていこうと思った
このワークショップをともに経験した仲間がつながって、これまでの労働組合の「お作法」にとらわれず、困難に直面する当事者が声をあげ、立ち上がる、希望を持てる労働組合運動を進めていきたいという思いを共有し、ワークショップは終了しました。
私自身もこの2日間一緒に走り抜けたチームメンバーと、早速その日の夜からアクションをしています。今後は2日間という短い時間で作ったキャンペーンを見直しながら具体的な変化を作っていこうと思っています。もちろん担当チーム以外のキャンペーンにも心が動かされアクションする際には力になりたい!背中を押そう!と思いました。このワークショップは型を学ぶ場でしたが実際に走り出そうとするキャンペーンがいくつも生まれました。ワークショップが終わっても、自転車の補助輪のようにコーチとしてみなさんのキャンペーンの力になろうと思っています。
越智太一(コーチ)