コーチとしてもチャレンジ
私がコーチとして参加したのは、今回が初めてでした。自身がワークショップに参加者として学んだのは、2021年のこと。当時通っていた大学院の先生の勧めで参加しました。当時はオンラインでこんなに時間に厳しく、濃密な時間があるのか!?と圧倒されながら、付いていくのに必死でした。
学んでからしばらくはコミュニティ・オーガナイジング(以下、CO)のことが頭にありましたが、しばらくすると記憶が薄れてしまっていたのも事実です。COのことを分かりやすく解説した本も出版される中、「自分は全然COができてないな・・・」と反省しきりでした。
そんな中、本業でCOに再度触れる機会があり、コーチをさせてもらうことに。軽い気持ちで引き受けてしまったものの、各単元(モジュール)のことはすっかり忘れている中、本当にできるのか!?と不安な気持ちが押し寄せてきました。
しかし、2回のコーチトレーニング、3回のコーチペアでの打ち合わせを経て、COを身体に染みこませていきました。まだ見ぬ参加者の皆さんの学びをできるだけ豊かにするため、コーチ陣では細やかなすりあわせを行いました。今回のスタッフチーム「いつだってニューフェイス」は、直接会ったことはなくとも、今では戦友のような仲間です。
価値観を見つけることの難しさ
緊張の面持ちで集まった皆さん。オンラインでのワークショップに慣れていない方も多くいましたが、23人の参加者全員が無事に集合することができました。
導入としてCOの概要を学びやワークショップ全体のノームづくりをしました。その次はコーチングの講義を聞きブレイクアウトルームに移動し早速コーチングの実践に挑戦しました。初めて会う方同士でも、思い切って演習にトライしていたのが印象的で初めてとは思えないほど飲み込みが早い!と感じました。
次はストーリー・オブ・セルフを学び、語ります。ワークショップは6人で1チームとなりワークを進めていきますが、ストーリー・オブ・セルフの演習で初めて、チームメンバーと会いました。ストーリーを通して、メンバー一人一人の価値観が伝わってきて、チームとしての一体感が生まれ始めたように思います。
「今」と「私」、そして「私たち」がつながるまで
あっという間に1日目が終わり、後半の2日目へ。戦略づくりから始まりますが、私が担当したチームでは、「昨日終わったあとこんなことを考えたんだけど・・・」というシェアもあり、皆さんの本気度が垣間見えました。
更に一体感を増したチームは、戦略的ゴールづくりに向かっていきます。私たち「リーダーシップチーム」と共に立ち上がる「同志」を特定し、協力してくれる「支持者」、その他にも「競争者」や「反対者」にも目を向け、マッピングをしていきます。
続いて「変革の仮説」をつくり、自分たちが成し遂げたいことの筋が通っているのかを言葉にして確認します。言葉にすることで、改めて見えてくるちょっとした違和感にも目を向け、チームで目線を合わせながら、仮説の確からしさを高めていきます。また、別のチームとのピアコーチングを経て新たな視点も入り、より説得力のある戦略を作っていきます。
そしていよいよ戦略づくりも大詰め、キャンペーンのタイムラインを考えていきます。いつ、どんなアクションを、どれくらいの規模で実施すると、同志のパワーが貯めてたまっていって戦略的ゴールに近づくことができるか?試行錯誤を繰り返し、タイムラインに手を加えていきます。議論を進めていくうちに認識の違いに気付き、行ったり来たりする場面もありましたが、協力してキャンペーン・タイムラインを完成させました。
最後はストーリー・オブ・セルフ(私の価値観を語る)、ストーリー・オブ・アス(私たちの価値観を語る)、ストーリー・オブ・ナウ(私たちの価値観に照らした緊急性と求めるアクションを語る)を組み合わせて、パブリック・ナラティブを語ります!自分自身の原体験、二日間WSをともに乗り越え、何を大切にしている私たちなのか思い出し、聞き手に呼びかけたいアクションなどを組み合わせ、パブリック・ナラティブを作っていきます。2日間の総決算といって間違いない、心揺さぶるストーリーがたくさん生まれました。
実践と学びはまだまだ続く
みなさんの熱気が冷めやらぬまま、ワークショップは終了を迎えました。放課後(ワークショップ後のフリータイム)にも4チーム、半数以上のメンバーが参加くださって、名残惜しいという声、今後はこんなことを学びたいという声もありました。事後アンケートでは、次の2週間でやってみたいこととして「仲間と改めて価値観を共有し関心と資源を交換したい」という項目が一番多かったです。ワークショップ後のフォローアップの会では、さっそく皆さんの実践に活かされると聞き、その成果も聞いてみたいところです。
参加後のアンケートにも、「普段、自分と向き合わないので、私の分からないことを一緒に引き出そうとしてくれたことが、凄く有難かったです」といった、自分と向き合う機会として有意義だったという方もいました。また、「この感覚を忘れてしまわないように、実践を続けていきたいと思います」と今後も実践を続けたいという声もいただき、スタッフとしても嬉しく思っています。
ワークショップ参加者向けのコミュニティがあるのですが、その案内を受けて「やってみると、なかなか自分のものにするのには時間がかかると思ったので、その後のコミュニティがある点、安心できました」というお声もいただきました。実践してうまくいかなくても、戻ってこられる仲間がいるのは、とても心強いことですね。
コーチとして気付いた「価値観」と「関心」の違い
私自身、初めてコーチとして参加し、それぞれのモジュールをより深く理解することができました。特に印象に残ったのは、「価値観」と「関心」の違いです。例えば「子どもの支援をしたい」「労働者の権利を守りたい」といった、活動分野に関わることは、あくまでその人の関心です。本当の価値観・・・例えば「誰もが健やかに成長できる社会をつくりたい」や「助けてと言える社会にしたい」などが、その人の奥に眠る「大事にしたいこと」=価値観です。自分自身の価値観を掘り起こし、他者と共有することが関係構築・チーム構築においてとても重要でありながら、とても難しいことだと改めて知りました。
私たちは普段活動をしていると、どうしても目の前のやるべきことに追われてしまい、それぞれの価値観を奥にしまいがちです。でも、その価値観を改めて思い出し、自分にとってなぜ大切なのかを仲間にも知ってもらうためにストーリー・オブ・セルフを語ること、関係構築において価値観を共有すること、チームが共有する価値観を見出すことが、COの大事なポイントなのだと思います。
なんとなく表面的な関心だけでつながると、少し行き詰まった時にパワーを失ってしまいます。ワークショップでは、何度も価値観を確認し直す場面がありました。ワークショップという限られた時間の中では十分に話し合えず、細かい部分は決められないこともありました。しかし、価値観を再び共有することで、チームとして強いつながりが構築されていったと思います。
私自身も、今後の活動において価値観を語ること、相手の価値観も聞くこと、そしてお互いに共有することを大事にしたいと思いました。
今後もつながり続け、COを学び続けよう!
第11回目のCOJ主催オンライン フルワークショップは一旦幕を閉じました。参加された皆さん、本当にお疲れ様でした。しかし、COの学び・実践は始まったばかりです。各自の地域や団体で活かしてみたり、新たな活動を始めてみたりすることもあると思います。行き詰まったら、仲間とコーチングしあうことで、励まし合い・助け合いましょう。
改めてご参加いただき、ありがとうございました。これからもよろしくお願いします!
レポート:山角直史(コーチ)