「学びが濃すぎて、今晩は眠れない」
ワークショップ終了後の参加者コメント。この言葉に何か全てが凝縮されているワークショップであった。
北は北海道から、南は九州まで、まさに”東西南北”からの参加
今年3月に実施するはずだったフルワークショップ。コロナの影響もあり、楽しみにしていた参加者がたくさんいる中で、フルワークショップは中止となった。数ヶ月間かけて準備に関わってきたスタッフも残念な気持ちで一杯だった。
それから約半年。初めてのオンラインによるフルワークショップ。スタッフは何ヶ月も前から、スムーズなオペレーションとなるように、入念に準備を重ねた。また、参加申し込みもキャンセル待ちが出るほど盛況だった。
対面のワークショップでは物理的な制限があり、全国から飛行機や電車で乗り継いで来ていただく方もいらっしゃったが、オンラインではそういった制限もなく、北は北海道から、南は九州まで、まさに”東西南北”からの参加者42名、25名のスタッフ、総勢67名で構成された大掛かりなワークショップとなった。
ワークショップ当日。参加者の皆さんが続々と画面に入ってくる。一人一人に声かけしながらの念入りな音声チェックとスクリーン名の変更を行う中、カメラ越しの参加者の皆さんの表情には緊張感が漂っていた。
1日目の前半はコーチングとストーリーオブセルフ。コーチングはその人の抱えている課題について、心・手・頭のどこに問題があるかを分析、繰り返し質問を重ね、課題を抱える方が自ら課題を発見するもの。ストーリーオブセルフは、自分の今の活動の原動力はどこから生まれてきているのか、そして、そこからどのような希望が生まれたのか、自分を語る方法を学ぶワーク。「5分でストーリ作って、2分で話して!」なんて、参加者の皆さんは、時間に追われながら、悪戦苦闘しながらも積極的にチャレンジ!
「自分と全く違う活動をしている人と共通の価値観を深掘りする大切さを知った」
1日目の後半は関係構築とリーダシップチーム構築。関係構築は、前半で学んだコーチングとストーリーオブセルフを活用して、自分が一緒に活動したい人とまさに関係構築する方法を学ぶ。価値観でつながっていくことがポイントである。リーダシップチーム構築では、これから活動をしていくメンバーの間での共有目的やルールや役割分担を決めるなど、チームとしての結束力を高めるために言語化することを学ぶ。
「自分と全く違う活動をしている人と共通の価値観を深掘りする大切さを知った」など、違う活動をしている人とも共通の価値観で繋がれるという新たな可能性の発見!
「zoomでどうなるかと思ってたけど…」
1日目の振り返りで、「zoomでどうなるかと思ってたけど、ここまでできて楽しく出来た。想いが凄くあって活動しているのが伝わってきた」、「zoomで出来るんだ!自宅でリラックスできるのもいい」など、オンラインでのワークショップを心から楽しんでいただいているコメントが一杯あり、ひとまずワークショップはうまく進んでいるようで安心。参加者の皆さんからの積極的な発言(音声やチャット)も目立った。
2日目の前半は、戦略I。戦略Iでは、解決したい戦略的ゴールを明確にすると共に、どのような困難を抱えている当事者と一緒に取り組むのか、どのような方法で取り組むのかについて、社会を変革していく上での仮説創り。対面のワークショップでは模造紙やポストイットへの書き込みを活用して、インタラクティブに行うワークでとても骨の折れるワークの一つだ。オンラインツールを活用して、同様の環境を作り出すことで、対面のワークショップと同じような感覚でワークが進んだのも驚きであった。
対面では、雰囲気とかでなんとなくできることが難しいオンラインでのワークショップ。既に初日で関係構築を通じて、価値観をしっかりと言語化して伝え合うこと、1対1のブレークアウトセッションで語り合うことで、集中して語り合うことができていた背景もあり、各グループでの活発な議論に繋がったのではないかと思った。
「自分らしく」、「差別なく」、「ありのまま」、「自分で選択」、「一人一人を尊重」など、全てのグループが“多様性を大切にする”観点での発表
2日目の後半は、戦略IIとナラティブ・リンキング。戦略IIは、戦略Iで作り上げた戦略を実現するための具体的な戦術を策定。どのようなステップで戦略的ゴールを達成するかを議論。こちらも、対面のワークショップでは模造紙やポストイットへの書き込みを活用して、インタラクティブに行うワークであるが、オンラインツールを駆使し、参加者の皆さんからたくさんの意見が出し、活発な議論が行われた。
戦略IIの最後には、7グループがそれぞれの熱い想いを戦略に載せての発表。チーム名もとてもユニーク。『レインボーフラワーフレーク』、『えんぴつB17』、『チーム DISCOVERY – DYP (Discover Your Potential) -』、『 チーム∞(末広がり)』、 『ファイトオペ(抑圧とたたかうファイトオペレーション)』、『rise』 、『Back to Nature』。
どれもとても素敵な戦略であった。 また、チームによる発表で恒例となっているチャント(チームの士気を高めるために行うダンスや掛け声)もオンラインならではでのユニークな物になった。「自分らしく」、「差別なく」、「ありのまま」、「自分で選択」、「一人一人を尊重」など、全てのグループが“多様性を大切にする”観点での発表だった。全国から集まってきた参加者の観点。これが今の日本が抱えている大きな課題なのだろうか。
コミュニティがもたらすソーシャルキャピタルの構築はますます大切に
そして、ワークショップ最後のナラティブ・リンキング。ご自身のストーリーオブセルフ、会場の参加者全員のストーリーオブアス、それぞれの課題の緊急性を語るストーリーオブナウを全てリンキングして、ナラティブの作成。「5分でストーリー作って、3分で話して!」なんて、無茶な課題にも果敢に取り組んでいただいた。7グループそれぞれから選ばれた参加者からの、希望あふれる、そして素晴らしいストーリーの発表に、オンライン上での参加者の皆さんからたくさんの”いいね”、そして、思わず「参加します!」と、参加者の皆さんが口ずさんでしまうほど好評であった。
二日間の対面フルワークショップに近い品質で参加者の皆さんに、どれだけ多くの価値をお届けできるのか、私自身、コーチとしてもチャレンジであった。参加者の皆さんもオンラインでどれだけ価値が享受できるか不安な方も多かったのではないかと思う。しかしながら、ワークショップ終了後、参加者の皆さんやスタッフの安堵の顔を見ていると、しっかりとした価値をご提供できたと思い、ニューノーマルにおける新しいワークショップを参加者の皆さんと作れたのはとても嬉しい経験だった。
参加者アンケートの結果からも、その感覚は裏付けられた。ワークショップの事前アンケートでは、「社会は、私の行動によって変えることができるか」、「社会を変えるために行動したい。行動する勇気を持っているか」という質問に対して、「どちらでもない」、「そうは思わない」の回答割合が、それぞれ”16%”、”19%”あったが、事後アンケートでは、それぞれ、”0%”!! また、「とてもそう思う」との回答割合が、事前アンケートでは、それぞれ、”30%”、”43%”だったが、事後アンケートでは、なんとそれぞれ、”73%”、”83%”に!!本当に、すごいワークショップだなと改めて思った!
SDGsへの対応が求められている世の中で、誰一人残されることのない社会を、コロナ禍や少子高齢化社会がいよいよ本格化していく日本社会の中で、コミュニティがもたらすソーシャルキャピタルの構築はますます大切になってくると思う。
そして、社会とのつながりを作っていくことが本当に大切になってくる中で、コミュニティオーガナイジングが提供する価値がこれからますます求められる世の中になっていくのではないかと思っている。
オンラインでのワークショップ提供は、これまで届けられなかった地域の方々や外出ができずにいる方々にもコミュニティオーガナイズをお届けできる可能性を秘めている。ワークショップを通じて、自己効力感がたかまった参加者の皆さんと一緒に社会課題解決を進められるように、全国で困難を抱えている人が一人でも多く救われるように、コミュニティオーガナイジングの普及にチャレンジしていきたい。
レポート:福士浩(本ワークショップコーチ)