※このコーナーでは、ワークショップを受講頂いた方、オーガナイザーを志す方にとって活動のヒントとなるような内容をお届けします。今回は書籍の紹介です。
学習する組織――システム思考で未来を創造する
ピーター・センゲ
英治出版
「学習する組織」をご存知ですか?
複雑さを増しますます変化が早くなる現代社会において、変化を予測し変化に対応していくのではなく、自ら変化を作り出していく組織を作るためのコンセプトや実践事例が散りばめられている本書は、90年代に出版され世界中で100万部を超えるベストセラーになった組織学習論の決定版です。
※95年に「最強組織の法則」として出版されたものの増補改訂版です。
本書、P29でも組織学習の実践者としてコミュニティ・オーガナイザーが挙げられており、コミュニティ・オーガナイジングと組織学習は切っても切り離せない関係にあります。
学習する組織は、下記の5つのディシプリンから成っています。
①自己マスタリー:自分自身の明確なビジョンを持ちながら、ビジョンと現実との間の緊張関係を、創造的な力に変えて成長していくプロセス
②メンタルモデル:それぞれの人がもつ「世の中の人やものごとに関する前提」
③チーム学習:チーム・組織内外の人たちとの対話を通じて、自分たちのメンタルモデルや問題の全体像を探求し、関係者らの意図あわせを行うプロセス
④システム思考:ものごとを一連の要素のつながりとして捉え、そのつながりの質や相互作用に着目するものの見方
⑤共有ビジョン:メンバーそれぞれのビジョンを重ね合わせて、組織として共有・浸透するビジョンを創り出すプロセス
コミュニティ・オーガナイジングのワークショップのチーム構築のパートでは、成功しているチームは
①ゴールの達成
②チームの能力向上
③個人のリーダーシップの成長
の3つの結果を得ることができるとお伝えしています。
また、チーム構築ではストーリー・オブ・セルフで語られたメンバーそれぞれの価値観を元に共有目的を作っていたことを覚えているでしょうか?
学習する組織とコミュニティ・オーガナイジングの類似点をまとめると、下記のように考えられます。(多少強引ですがご了承ください)
共有ビジョン:チームの共有目的やストーリー・オブ・アス
チーム学習:チームの相互依存的役割分担やノーム、キャンペーン
自己マスタリーとメンタルモデル:コーチングとストーリー・オブ・セルフ
コミュニティ・オーガナイジングの実践に際して、個人の成長とチームや組織の成長を両立するために、この学習する組織の方法が適応可能な場面が多々あると感じています。
580ページを超える長編ではありますが、それだけの時間を投資する価値のある一冊です。
会沢裕貴(COJフェロー)