ワークショップ

WORKSHOPS

参加者の声
コミュニティ・オーガナイジング・ワークショップ
VOICE #19 facebook twitter
鴻巣麻里香
Project KAKE COMI(プロジェクトカケコミ) http://www.kakecomi.org

ワークショップに参加した動機は?

2015年2月にパブリックナラティブ(Story of Self)の1dayワークショップ(WS)を受講し、自分自身の物語によって共感を引き出し、つながりを広げるという新鮮な体験をしました。私はメンタルヘルスケアを専門としていましたが、そこでは物語(ナラティブ)を戦略的に用いるという発想がありません。しかし、自分自身の困難な体験を語り、自分と他者を共感でつながり、それが社会を変える種火となる。それによって私自身がとてもエンパワメントされました。そして同じ年の6月にそれまで勤めていた公的機関を辞め、不登校や貧困などの課題を抱え地域で孤立している子どもたちにおいしいご飯と自主学習のサポートを届ける安全な居場所づくり事業を立ち上げました。思い立って行動を起こしてから実現までわずか3ヶ月でしたが、充分な資金と協力者を集めることができました。それは活動の周知において、Story of Selfを意識的に活用しそれを軸とした効果です。
 
これは使える。間違いなく使える。

順調なスタートダッシュを切ったこの活動のその後の展開における必要性は、同志を増やすことと、その同志それぞれがリーダーとなって子どもたちの多様な居場所を各地に展開することです。そのためにCOが必須であることを確信し、参加を決めました。

ワークショップに参加した感想は?

「今・できることから動き出す」ことを肯定し、後押ししてもらえた感じがします。
自分が起こそうとしているアクションの、
①今、一番必要としている人は誰か
②今、できることは何か
このふたつが明確になります。地域の課題を把握し、アクションを起こそうとすると、いきなり大きなことに取り組もうとしがちです。お金を集めなければ、組織を作らなければ、場所を用意しなければ……そういった計画に時間を費やしている間も、地域の課題は放置されています。やろうと思った「今」が動く時であり、その「今」できることを探す。その「今できること」という小さな動きを積み重ねていく非常に実戦的な体験がエキサイティングでした。
 WSで学ぶことは戦略です。しかし、その戦略のベースにあるものは共感です。共感を引き出すのは私たちの体験についてのナラティブであり、それは困難な(トラウマティックな)体験です。共感によるつながりには安心感と信頼感があります。その安心感・信頼感という温かみのあるものを、戦略的に用いる。その柔と硬のコントラストと融合が印象的であり新鮮でした。
 困難な体験談を「戦略的に」用いる、という表現に抵抗を感じる方がいらっしゃるかもしれません。しかし戦略の前提には温かな共感があります。勇気を出して語る仲間のナラティブに心を動かされ、自らも語れるようになる。そしてその語り(ナラティブ)への共感が社会を変えるアクションへとつながる。それは自分の体験をポジティブな意味づけに変換する過程でした。そして同時に「困難を経験した人だからこそ必要性を感じ、動くことができる」という当事者の可能性への気づきとなりました。

今まで参加してきたワークショップとの違いは何ですか?

今まで参加したどのワークショップや研修よりも、自分への自信と信頼を深めることができました。あれだけ時間に追われ、あっぷあっぷしながら、考えを深める余裕なく不完全なアウトプットを繰り返しコーチングされ…という容赦のなさでしたが、終わってみれば不思議と「私にはできる」という自信が深まっています。それは、仲間とチームを組んで実際に実現可能性の高いソーシャルアクション(社会を変えるプロジェクト)を立ち上げキックオフイベントを企画する、という超実戦的な演習によって培われた自信です。出身地も活動地域も職種も活動の対象者も異なる初対面の仲間でそれぞれの語りを共有し、関係を構築し、対象者を決め、アクションを起こす。しかもそれぞれのプロセスを「5分!」「3分!」「30秒!」という時間制限の中で行う。こんなんじゃだめに決まっている…もっとじっくり練ることができたらいいのに…そんな不安を通過して、しかし形になったアクションは、今すぐにでも現実化できそうな具体性の高いものでした。そしてそこには、私たちが今持っているリソースが活かされています。それが自信につながりました。

コミュニティ・オーガナイジングを今後の活動にどう活かしたいですか?

 当事者の可能性。
 それが、私がこのWSで得た最大の気づきです。困難を体験している人だからこそ、必要性を理解している。必要性を理解しているから、アクションを起こすことができる。その困難と必要性をナラティブに変換することによって、共感を引き出し、つながりを広げることができる。私が今まで「サービス(支援)の対象者(利用者)」としてきた人々が、私のアクションの同志になりうる存在だったのです。
 ピアサポート、という実践は各地で行われています。当事者が当事者をサポートし、支え合う支援の枠組みのことです。しかし、その当事者間の関係性の外側にサービスの提供者(支援者・専門家)が位置し、ピアサポートはそのサービス提供者が作る枠組みの中で行われます。当事者を同志とすることは、このピアサポートの枠組みとは異なります。サービスを提供する・されるという枠組みを抜け出して、必要性を共有する全員が当事者になり、同志になり、リーダーになる、ということです。
 私は今行っているプロジェクトを次の段階に進めるために同志を必要としていました。孤立した子どもたちの居場所を増やす、そして孤立した大人の居場所を作る、そのための同志です。WSに参加する前まで、私はその「同志」が地域の実力者や経済的な支援者、専門家だと思っていました。しかし、WSを終えた私にとっての同志は、居場所を利用する子どもたちであり、その親たちです。誰よりも必要性を感じている彼らこそが同志であり、彼らにはリーダーになるポテンシャルがある。彼らを同志として、そして新たなリーダーとして、共にアクションを起こしていく。COによってその可能性が拓かれました。