コミュニティ・オーガナイジングを活用したキャンペーン

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コミュニティ・オーガナイジングを活用したキャンペーン
CAMPAIGN #4 facebook twitter
見守り、成長するオーガナイズ
キャンペーン進捗報告(板垣泰之さん) 2016年7月のニュースレターより

岩手県金ヶ崎町でコミュニティ・オーガナイジングを実践している板垣泰之さん(2015年度CO実践プログラム「実践!COいわて」参加者)が、町の新成人をオーガナイズし、町主催成人式の開催時期を夏から冬に変えるキャンペーンに取り組みました。ご本人による体験記です。

見守り、成長するオーガナイズ
岩手県金ケ崎町 板垣 泰之

1.そもそもなぜCOを必要とするか。
 どうも、金ケ崎町で地域おこし協力隊をしております。板垣と申します。まず、金ケ崎の説明をしますと、金ケ崎は1万6000人の岩手県内でも有数の工業団地を有している町です。ちなみに、消滅可能性都市にならなかった岩手県でも数少ない町の一つになっています。そこで、地域おこしをしておりますが、地域おこしと言っても農業や観光ではなく自分が担当している分野は特殊で、文化遺産を活用した地域おこし、地域づくりという事でやっております。ここで、早速COを活用しようとした理由が発生するのです。文化遺産というものはそもそも、生活に直結するとは思われづらい分野という事が言え(個人的にはそうとは思いませんが、それは別の機会にでも…)、地域の人たちの力を結集しなければなかなか活用していこうという機運にならない。そもそも、そのジャンルで人をまとめるすべを知らない。さらに金ケ崎に来て感じた何かを成し遂げようとする感覚が薄くなっているという事もCOの手法を必要とした理由でした。さらに、特に若い人たちはお隣にある金ケ崎より大きい町である北上市や奥州市に出かけて行ってしまいます。そこから、金ケ崎が何もないというような印象を持ってしまっているのです。
 さて、COを学んだ時にやはりアメリカ大統領選などの大きな話が主で、しかも深刻な社会問題を解決する手段として用いられるような感覚があり、懐疑的な部分が非常に大きかったことは否めない状態でしたが、その中で自分なりに解釈して、使える部分は使って行こうと考えていました。自分としては、社会を変えるや世界を変えるという大きい内容ではなく、手におえる範囲の世間を変えることはできるのかなとは思っています。

2.2016年度新成人との関係
 彼らが現在の職場である金ケ崎町中央生涯教育センターにやってきたのは1月末ごろだったかと思います。3~4人のいわゆる今どきな男子たちでやってきて、うち1人は遅刻をしてくるという状態でした。書類作成の間に聞こえてくる話によると、どうやら、彼らは成人式を冬にしたいという事で来館したようです。しかしいざ、行政に対して話をするという事になっても、なぜ成人式を冬にしたいのか。冬にする必要性は何か。女子の意見はどうなっているのか。そのすべての答えが何の正当性もなく、根拠もない状態でした。もちろん、行政側としては正当な理由でどんどんツッコんできます。もちろん、彼らは答えられないのですが、話し合いが終わっても納得いかないようでした。
 この話を脇で聞いて、このままでは、そもそも行政には期待しない。さらには金ケ崎町には期待できない。と感じるのではないか。この町の変わろうとする力を無条件で押し込める状態になるのはもったいないのではないかと考え、彼らをナンパしました。
「どうだった?」
「いや、ダメっすね。おっさんたちは頭固いっすから。」
「でも、理由聞かれてたけど、冬が普通だから冬にしたいんです。では、難しいと思うよ。」
「ん~、でもとにかく言ってもしょうがない感じっすよ。頭固いから。」
すでに諦めてる感がすごいです。しかも、頭が固いの一言ですべてを終わらせてます。このまま、彼らが何となく成人式を迎えてやっぱつまんねぇ町だな。となるのは双方にとって損害です。しかも、新成人は232人もおりその人たちにそういう思いが伝播すると大変です。
「君らがほんとに動くんだったら、手法は話すことができる。ただ、俺は動かないから君らがしっかりとした覚悟を決めたら、連絡して。」
そう言って、名刺を渡したのが始まりでした。
翌日だったでしょうか。早いうちに彼らから連絡があり、空き店舗を改装した協力隊の拠点で集まることにしました。

3.プロジェクトの開始、進め方
 まだ、ここまで書いてきて気になるプロジェクトの話にまったく進んでないですね。そろそろ始まります。
 第一回の集まりでは8人前後の新成人メンバーが集まり、実行委員会の立ち上げが始まった現在まで、8人ぐらいが中心になっています。第一回には、まずガイダンスをおこないました。COの手法をかいつまんで、オバマと同じ手法だからというどことなく魅力的な言葉を使いつつ、オーガナイズセンテンスについて、タイムラインについて、スノーフレークの人のつながりについて、ナラティブについて中心に話をしました。また、目標(変革の仮説)を約200人のアンケートを町長に提出することにしました。特に彼らの一番の問題だったこのプロジェクトをなぜしなければならないのかを明確にするためにナラティブに力を入れる必要があり、そこを重点的に話し合いました。そのためには、夏になぜ成人式をするようになったのか、自分たちだけではなく、今までの成人式とこれからの成人式を考えなければならないという課題を見つけることができました。また、成人式を冬におこなうためには町が夏の成人式の準備にかかる前に動かなければなりません。時間がありません。最近思うのはやはり人間、期限があってそこに向かって動かなければならないとなると、計画的にやろうと考えるし、成功させたい気持ちは途切れることなくタイムラインのピークにより維持することができるのかと思います。確かに、何も目標点がないとだダラダラしがちですよね。
 ただ、ここで新成人になる彼らが主体であることは忘れてはいけません。こうすればないいよ。とか、こうするべきだ。は厳禁です。そうです、ここでコーチングです。
「成功させるにはどうすればいいと思う?」「時間ないけど、いつまでにする?」
「大勢の声を集めるにはどうする?」「集めた声はどうする?」
 ただし、注意しなければいけないのは、若さゆえにすぐに話が脱線することです。
「お前が、女の子たちをナンパして、署名してもらえばいいんじゃない?」
いい訳がありません。
こちらがすることは彼らが、彼らなりに動けるように環境を整備することです。ワークショップは多分未経験のが多く、こちらの大人の事情もサラッと伝える必要ももちろんあります。そして、脱線させず集中するようにする。そのためにCOでもよくやるタイムキープは非常に重要です。1時間で終わらせるから、話し合いするよ。と声をかけたりもしました。こちらが手をかける部分はそこだけでいいのではないかな。と思います。
その他に新聞取材の手配なども新聞社の方とつながりがあったことから、おこないました。アピールするなら新聞社に声かけるよ。ただし、やりきらなきゃいけないからね。という事で、これも彼らだけでは難しいところはあると思います。パイプ役に徹します。
そういった活動や話し合いをおこないながら彼らが出した結論はアンケートを自主的に取る。その結果を町に提出する。でした。

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4.経過
 その後、彼らは「成冬会(せいとうかい)」(成人式を冬にする会)と名付け、成冬会の活動は新聞に載り、成人式を冬にしたいという動きがあることを行政側も把握しました。アンケートは最初に町内のスーパーの街頭でもおこなう予定でしたが、スーパーに断られてしまったため、メンバーが趣旨を話せるようになって(それぞれナラティブができるように、価値観を共有するように。)個別にアンケートをおこないました。彼らが自主的に集めたアンケートは彼らが今回のアンケートについて趣旨説明をしているからか、冬にしてもよい、冬がよい。とのアンケート結果が大部分を占めることとなりました。
 それに合わせて行政側でも、全町を対象に無作為抽出アンケートをおこなうこととなりました。そちらの結果は回答率38.9%のうち54%が冬の開催に同意しているというやや冬開催が優勢ではありましたが、まだまだ冬開催を決めきれない部分もあるものでした。成冬会では、より積極的に動いていることを強調するためにも町長に直接自分たち新成人から結果を提出する機会を考えたいとの話があり、初めは行政側に機会を設けてもらうように話を持ちかけようと考えましたが、自分が間接的に行政側に相談したところ、町長に直接話をする機会である「ふれあい町長室」を利用し、町長に直接新成人から話をしてもらい自主的に集めたアンケート結果を提出する方がよいのではないかという話が出ました。そこで、そういった機会が月に一度あることを伝え、彼らが自分たちで日程調整等を行い、町長に自分たちで動いた実績を伝える形で進めていきました。結果的に行政が設定した機会を利用するよりも行政に対するアピールを行える機会になったのではないかと思います。のちに成冬会の代表に話を聞いたところ、「若い世代のこういった動きは叶えていただく方が、これからの世代のためになるのではないでしょうか。」といったようなことを話して、調子に乗りすぎましたかね?と言っていました。しかし、ある意味そういった発言ができることも彼らがある程度の自信がつく活動をおこなってきた結果の一つなのではないかとも思います。

5.その後、これから
 行政内部で検討がおこなわれた後に、正式に冬の成人式開催が決定しました。決め手は選挙権が18歳になることや、今後の若者の地域活動への参加を期待したものということでした。今まで、そういった動きが見られなかった金ケ崎町で動きを起こした事が評価されたと考えています。しかしこれは、同時に今年の成人式の見方が厳しくなっていることでもあり、これから成人式実行委員会の立ち上げをおこない、自分たちで変えた金ケ崎冬の成人式の1回目として成功させなければならないという重圧もかかってくると思います。(今の所、その様子は見られませんが。)ただ、変わることを実感した彼らなので成功させてくれることを今後も見守りながら期待しています。

6.最後に
 だんだん、章が短くなってきたのは書くのに飽きたからでしょうか。その所は「あるある~」と思って見逃してください。
 さて、「見守り、成長するオーガナイズ」と題を付けましたが、書きながら思ったことは「本当に変えたいという欲求があるならば、成長せざるを得ない」のではないかという事です。人から言われてやることは基本的に面白くありません。自分は少なくてもそう思っているため、プラスで何か自分の成長につなげる、自分なりのエッセンスを少し加えるという考えを持つことで面白いものにするということを心がけています。それなりに面倒になるけど、そこを放置すると面白くなくなります。やりがいがなくなります。
 何か物事を実現するためには自ら考え、成長し、達成させる。それなりの労力がかかることを避けては通れないのだと思います。今回であれば、COの手法(彼らは知りませんが)を知った事、アンケートを取った事、町長に結果を提出したことが彼らの達成の理由なのかもしれません。
 あくまで、自分は見守る立場にいました。それは正直言って、成人式が冬になろうと夏になろうと関係ないからです。自分が一番必要としていたことは彼らが行動をとる事です。途中で彼らが「面倒になったからやめます。夏でもいいんです。」という事があれば、それはそれで彼らが出した結果だと思っていた部分があります。その時は、夏にやるのを最高にしよう!という動きが出てくるのではと考えていました。当然、あきらめないで欲しいところはありますが、あくまで主体ではないというところで、彼らがしたいようにするというそのフィールドを作る役目が今回はできたのかなと思います。まだまだ、成人式の開催までは時間があります。そして、これからも彼らは金ケ崎で生きていく人が多いと思います。その中で、少しでも人生が面白いと思えるようになればと思っています。そうすれば、面白い町に変化していくのではないでしょうか。面白い町になれば、改めて町を見直すきっかけになり、それが町の歴史文化を見直すきっかけになってくれて、文化遺産を活用しようとしてくれるようになって、結果的に文化遺産が守られる!最高の結果です。そうなってもらえたら面白いな。と思っています。

 さて、妄想はこれぐらいにして最後に、このキャンペーンについて助言いただいたCOJの方々、岩手でCOをしている方々に感謝いたします。そして、今後とも楽しくできればと思いますのでよろしくお願いいたします。