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オーガナイザーTIPS『戦略と実行』(COJフェロー 山本佑輔) 2016年9月のニュースレターより

※このコーナーでは、ワークショップを受講頂いた方、オーガナイザーを志す方にとって活動のヒントとなるような内容をお届けします。今回は書籍の紹介です。

『戦略と実行』 清水勝彦

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本書はMBAの先生が書いたバリバリの「ビジネス書」ではありますが、COJのWSを受けた人にはとても共感でき勉強になる内容だと思い、今回取り上げさせていただきました。

全編に渡って本当に刺激的なのですが、私は何よりも本書の白眉は副題にある「組織的コミュニケーションとは何か」について書かれた第3部にあると勝手に思っています。

どれだけ素晴らしい戦略を立てても、それが絵に描いた餅になっていては意味はなく、それをどのように実行するか。そのためにはコミュニケーションが大切である、というと一見なんの変哲もない内容に感じられるかもしれません。しかし、多くの人が大切で当たり前だと思っていることに盲点があることは、みなさんなんとかなく思いたるのではないでしょうか。

著者は「コミュニケーションの目的」を以下のように定義しています(P150)。

ーーーー

1.価値観や考え方が同じである人同士の間では、その合意内容についてよく確認する

2.対立する人たちの間ではお互いの価値観がどういうものかを知り、なぜ対立するのか、どこが対立しているのかをよく知る

3.そして価値観が同じでも微妙にある「違い」に気づき、また対立してもそこにある「共通点」を見つける

ーーーー

コミュニケーションの本質が、単にしっかりと会話をするなどとは次元の違うものであることがここからもうかがい知れます。また著者が「価値観」や「感情」というものをとても大切に扱っている点にも親近感を持ちます。

例えば

「組織におけるコミュニケーションとは単に論的なメッセージを伝えることだけではなく、感情、気持ち、あるいは人間性までを伝え、共有、共感を作り出す力なのです」(P174)

といったあたりは、思わずパブリック・ナラティブを連想する方も多いのではないでしょうか。

私が本書を推薦するのも、新しい情報や知見が披露されている訳ではなく、いわれてみれば当たり前のことですが、読んでいると「うん、うん、確かにそうだ」と自身の実体験なんども頷いてしまうことの連続であり、それがまさに最初にWSを受けた時の感覚となんとなく似ているからです。

COJのWSでも、内容的な目新しさというよりも、当たり前のことを妥協なくなく徹底して、ゴールの達成を目指すということを伝えています。私も含めて、人間どうしても易きに流れてしまうものだと思います。それを乗り越えるための知恵が満載の本書、是非一読してみてください。

最後に

「コミュニケーションとは、異なったバックグランド、考え方、そして感情を持った個人が、組織の一員としての自分のアイデンティティを知り、自分の意思を場合によっては曲げながら共同作業を行い(前向きの妥協)、個人の力を組織の力に高めるための、効率の悪いしかしおそらく唯一の方法なのです。」(P318)

と書かれています。

社会課題の解決には抜け道や必殺技はなく、一歩一歩着実に進めるしかないのは自明のことのように思われます。しかしどうしても弱さから「易きに流れて」しまうのもよくある話。そんな時に常に手元において襟を正しくなるのがこの本です。

COJメンバーからのメッセージ(副代表理事 室田信一) 2016年9月ニュースレターより

 今から3年前、COJ設立のきっかけとなる最初のワークショップを開催するために、協力してくれる仲間を探し、準備のためのミーティングを毎週のように繰り返していたことが思い出されます。
 
 2013年12月にハーバード大学からガンツ先生に来日していただき、最初のワークショップを開催し、その後、ワークショップを手伝ってくれた仲間を中心にCOJを立ち上げるための準備を始め、2014年1月27日にCOJを設立しました。設立集会には多くの方が出席してくださりました。今でも忘れませんが、その会場に出席されたプレカリアートユニオンの清水直子さんが、司会をしていた私に次のような質問をしてくださいました。
「私の働くユニオンでもCOJのサポートを得て、リーダーシップの輪を広げていきたいのですが、どのようにすればサポートを得られるのですか。」
 
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△COJ設立集会にて。
 
 コミュニティ・オーガナイジングの取り組みを日本で広げていくための基盤となる組織として、とりあえずCOJを設立するということに必死だった私は、そのような「同志」からのメッセージをもらい目が覚めました。まずは清水さんのように現場でオーガナイジングを必要としている人たちの声に応えられる組織にしていかなければならないと強く思いました。
 
 COJが設立して最初に取り組んだことは、ガンツ先生がいなくても良質のワークショップを提供することでした。そのためにはワークショップのコーチを担ってくれる仲間が必要だったので、2014年4月にコーチを養成する目的でワークショップを開催しました。そのワークショップに参加してくれた人たちは今でもCOJの礎として関わってくれていて、中でもCOJフェローの山本佑輔氏はそれを機にCOJに関わるようになり、今ではCOJにとって欠かせない存在です。
 
 最初の半年から一年はとにかく必死でした。ガンツ先生による最初のワークショップがメディアで取り上げられたこともあり、清水さんのようにワークショップを提供してほしいという声が各方面からCOJに届きました。それらの声になるべく応えられるようにワークショップを開催しましたが、今のように豊富な人材がいたわけではないので、数少ないメンバーで必死に準備をして回していました。また、要望に応えるというスタンスよりも、関心のある人は一緒に取り組みましょうというスタンスで、同志と共に歩みを進めてきました。その例として、2014年12月にガンツ先生を再びお招きして開催したワークショップでは先述の清水直子さんがコーチを担ってくれました。
 
 気がつけば、COJのワークショップを受講した人の数は1000名を超え、ワークショップのコーチを担ってくれる人は全国に80名を数える規模にまで成長してきました。また、ワークショップを提供することだけではなく、ワークショップをきっかけにオーガナイジングの実践をする人の輪も広がってきています。2016年3月には初めて「オーガナイザー祭」を開催し、COJのコーチが伴走した実践事例や、COJのワークショップを契機に設立された実践事例について報告してもらいました。それらの事例の一部は「実践ガイド」に収容され、ホームページから閲覧していただくことができます。
 
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△「オーガナイザー祭」にて。
 
 COJが設立してから2年半が過ぎました。コミュニティ・オーガナイジングが標榜するスノーフレーク(雪の結晶)のようなリーダーシップの広がりを体感する2年半でした。2013年12月の最初のワークショップを手伝ってくれたメンバー9名が理事となり、2014年7月にNPO法人格を取得しました。理事の任期は2年間なので、本来は2016年7月に改編をする予定でしたが、初めての改編ということもあり、人選や進め方など丁寧に議論しながら進めるために、3カ月遅らせて今年の10月に新理事体制で再出発するために現在準備をしています。
 
 各地・各分野で変化を起こそうと日々格闘している同志にとって、COJがその実践を進めるための拠り所として、また共に歩みを進める伴走者として身近に存在できるように、COJの次なる一歩に期待していただけたらと思います。
 
COJ副代表理事/首都大学東京都市教養学部准教授 室田信一

樋口 幸則

ワークショップに参加した動機は?

私は東日本大震災の被災地支援を企画し、継続的な支援を行ってきました。被災後3年が経ったころから、現地でのニーズの変化に次は、現地へ赴く支援から京都に居ながら出来る被災地支援を模索しながら行動したり、被災地支援の経験を活かして自分の住む京都のまちが少しでも良くなればと思うようになりました。
そんな中で、地域で防災訓練を企画・実施した経験から、消防団活動にも参加し、PTA役員やまちづくり活動なども参加するようになりました。
まちづくりに関わるなかで、多くの友人がコミュニティ・オーガナイジング(CO)を使ったまちづくりを行っていること知り、2014年12月に京都で行われたマーシャル・ガンツ博士の講演会「新しいムーブメントの形」にも参加しました。講演会では聞き慣れない単語や言葉が多くて、なんだか難しそうなイメージもありましたが、そのころからCOについて興味・関心はありました。
今回そんな友人たちが、コミュニティ・オーガナイジング・トレーニングを企画し、コーチとして参加することを知りました。ぜひ参加して友人らが話すCOという共通の言語を理解したい、共有したいと思いました。

ワークショップに参加した感想は?

参加者のみなさんのこのワークショップから何かを得ようと、自ら積極的に発言するなど熱意が最初から伝わってくるワークショップでした。
コーチ陣からもその熱意に答えようと「全ての予定をキャンセルしても参加する価値のあるワークショップ」と挨拶されていましたが、ワークショップの期待値のハードルあげて大丈夫かなと思っていましたが、さすが公言するだけのことはあるなぁと最初から最後まで感じました。
私は極度の人見知りの性格で、自分から話しかけたり全然出来なくて、最初は少し気後れする感じでしたが、チームのメンバーから気軽に声をかけてもらったり、コーチ陣にサポートしていただくなど、なんとか無事に2日間のプログラムを終了することが出来ました。
2日間受講して、これからCOを使って、何かこれまでと違う視点で行動出来ればいいなと思いました。

今まで参加してきたワークショップとの違いは何ですか?

今回のワークショップは朝9時~夜7時の2日間(約20時間)でしたが、1つのワークが3分や5分と、かなり細かい時間でチャレンジするワークでした。「そんな時間で出来ないだろう。」と余計なことを考える間もなく、1つ1つ課題をなんとかクリアしていく感じでした。頭で考え、理解するよりも身体(五感)で感じて答えを導き出す(考えるより慣れる)感じでした。
 またコーチ陣からは『COのワークは自転車に乗る練習と同じ』という例えが正しくその通りでした。ワークショップでは坂道から大胆に転んで傷だらけになりましたが、チームメンバーやコーチ陣から優しくフォローしてもらえ、2日間の間に大胆に転ぶ勇気が持てました。(笑)

コミュニティ・オーガナイジングを今後の活動にどう活かしたいですか?

コミュニティ・オーガナイジング(CO)を少しは理解することが出来ましたが、知れば知るほどもっとCO学びたいという欲求がふつふつと沸いてきました。またこれからの活動にどのようにCOを活かすことが出来るのかを考え、戦略を立てて実践していきたいと思います。
もしCOで分からないことがあったら、今回のコーチをしてくれた友人たちに疑問点を直接聞くことが出来るのもありがたい環境だと思います。
これからCOを広めていく活動にも、自分に出来るトコから参加したいと思いました。

山下比佐暢

ワークショップに参加した動機は?

私は,今の部署では,市民と行政(京都市)がどうすればうまく協働して市政運営やまちづくりを行っていけるのかを考える仕事をしています。その中で,NPOや企業,行政などはそれぞれ組織文化が違い,一緒にプロジェクトを進める時に,うまくいかなかったり,なんらかのしこりができてしまうことが多々あり,組織づくりの重要性と難しさを感じているところでした。私自身としても,これまで「もっとうまくできたはず」という心残りのある経験があり,また,このワークショップの時は,ちょうど,市の様々な部署の職員や京都府の職員の方,大学の先生など,いろんな立場の人が集まって実行委員会を立ち上げてイベント企画している最中だったので,組織づくりやプロジェクトをうまく進めるヒントを学べるのではないかと期待して参加しました。

ワークショップに参加した感想は?

ひとことで言うと,今すぐ,実践すべきこと,役立つことが具体的に学べたという感想です。まずは,パブリックナラティブ。参加した時は,自分のストーリーを語ることの大切さを特に感じている時でしたが,加えて,ストーリー オブ アス,ストーリー オブ ナウという概念を学べたことがとても奥深かったです。自分の価値観と相手の価値観をつなげることを今後も意識していきたいと思います。また,目標の設定・共有から戦略の立て方までの方法がとても具体的で勉強になりました。特に,個人で考えることと,みんなで考えることを繰り返す目標の設定方法は,これまで知らなかった方法だったので,今後,試してみたいと思います。戦略の立て方は,まだまだ訓練が必要だということを痛感しましたが,誰をターゲットにするのかをしっかり意識するということの重要性を感じました。

今まで参加してきたワークショップとの違いは何ですか?

スタッフの皆さんのコミュニティがしっかりとオーガナイズされている! ということを強く感じました。私が今まで参加したイベントやワークショップなどで,一番だと思います。身を持ってそれを感じさせてくれたのと,スタッフの皆さんお一人お一人が,とても熱意を持ってコーチしていただけたので,時間に追われながら,必死でワークショップをこなしている時も,スタッフの皆さんを信頼して,迷うことなく没頭できました。安心して学ぶことに集中できたというのは,とても大きかったと思います。

ワークショップの内容としては,「時間が限られている中で,とにかくやってみる。」「その中で,自転車で転んでみる。」ということを強調されて,しっかりと体験型の学びの場となっていたので,得るものが大きかったです。

コミュニティ・オーガナイジングを今後の活動にどう活かしたいですか?

ワークショップを受けたちょうど1か月後に,実行委員会の一人として関わっていたイベントが終了しました。イベント自体は盛況に終わりましたが,このワークショップを受けたおかげで,プロジェクトの初期に目標設定をもっとしっかりすべきだった,役割と責任をより明確にすべきだったなど,今後につながる具体的な振り返りができたので,早速活かされる場面がありました。次にプロジェクトを進める際には,目標設定,役割と責任,戦略などを意識をしていこうと思います。また,パブリックナラティブはプロジェクトを進める時だけではなく,日ごろから人に自分の想いを伝えるためにとても役立つと思うので,少しずつ練習していこうと思っています。

武田知記

ワークショップに参加した動機は?

誰もが住みなれた地域で、当たり前に暮らすことができる社会をつくりたいという思いを持って社会福祉協議会で働いてきました。
高齢者や障害のある人、子どもたちにいつも声をかけてくれる隣近所や馴染みのお店の人、駅などで困っている人を見たら「何かお手伝いしましょうか」と尋ねてくれる道行く人。そんな人が一人でも多くなったら世の中はもっとやさしくなるはず。
でも、より多くの人に福祉に関心をもってもらい、参加してもらうにはどうすればいいのか? その具体的な方法をもたないまま、私の中では理念ばかりが先行してきたように思います。
そんなあるとき、NHKで見たのがこのワークショップ。直感で、これはすごい!と可能性を感じ、「物語の力が社会を変える」というタイトルにも魅かれました。
いつか機会があれば学んでみたいと願っていたワークショップです。

ワークショップに参加した感想は?

頭も体も心もクタクタになりましたが、1分1秒の積み重ねが大きな力になって自分が変わっていく2日間でした。
たとえば、最初の講義では「同志がキャンペーンで力をつけていくこと」という意味がよくわからなかったのですが、2日目の戦略や戦術を考えるワークで「自分がサービスを提供するのではなく、同志が力をつけていくように!」と何度も助言いただき、おぼろげながらその意を感覚としてつかんだ気がしました。
また、1日目に見たスピーチの映像を2日目の最後にも見ましたが、同じスピーチでも、見方がまったく変わっていたのは驚きでした。パブリック・ナラティブを構成する要素(セルフ・アス・ナウ)が、2日間で少し理解できたのではと感じた瞬間でした。
2日間で学んだことは、単なる物語を語るスキルではありません。自分の原体験や価値観を深く見つめる機会でもありましたし、参加者同士でそれらを共有し、新しい活動をつくるための具体的な考え方や方法を学ぶこともできました。

今まで参加してきたワークショップとの違いは何ですか?

何より、自転車に乗ってみよう!という呼びかけ。自転車という言葉のイメージがワークと結びついて、とにかく思い切って乗ってみよう、転んでみようという気持ちになり、少し躊躇するときでも背中を押す言葉でした。
どのセッションも、講義、グループでのワークとコーチング、全体の振返りが丁寧にあり、また、グループに2名のコーチがついていただいたことで多くの気づきを得ながら理解を深めていくことができました。
分刻みのスケジュールは大変でしたが、今思えば、2日間で一連の体験できましたし、時間が限られていたからこそ自分の中にあるものを必死で絞りだすことができたのだと思います。
ノームを参加者みんなで作成したり、セルフを語るワークでお互いを理解しあったり、休憩時間に講師・コーチが気軽に声をかけてくださるなど、みんなで支え合うあたたかな場がつくられたこともこのワークショップの特徴だと感じました。このつながりを大切にしたいです。

コミュニティ・オーガナイジングを今後の活動にどう活かしたいですか?

このワークショップで学んだ考え方や方法は、仕事や活動で試したり活かしたりできるものばかりだと思っています。
職場で相談があったときにはコーチングで学んだことを意識するようにしています。また、私は何でも自分で抱え込みがちなところがあるのですが、スノーフレーク・リーダーシップの絵を思い出しながら、一緒に働く人たちが力を発揮することができる組織をつくっていきたいと考えています。

今回のトレーニングを受けてみて、社会福祉協議会が福祉をテーマとした地域づくりの可能性を広げるために、同志はだれかを考えること、パブリック・ナラティブを創ること、また、変革の仮説をもち、戦略、戦術のアイデアを豊かにすることがとても有効だと確信しました。
社会福祉協議会にCOを広める大きな一歩として、12月の社会福祉協議会職員向けCO研修会を成功させたいと思います。

西垣優衣

ワークショップに参加した動機は?

 私は中間支援組織の一員として、協働事業のコーディネーターやワークショップでのファシリテーターの役割を担う機会が多くあるのですが、そこには地域の課題を解決したいと強く願う様々な人が参加されます。私はそのような人たちの意見を取りまとめ、事態を前進させなければならないのですが、多様な価値観、主張をまとめきることができず、十分に役割を果たせていないと感じることが多々ありました。
 そのような中、このワークショップの目標に『チームの持つ資源を活かし、彼らの目標を達成させるリーダーシップを学ぶこと』が挙げられていたことに強く惹かれ、期待を持って参加させていただきました。
また、今回、私は岡山市の事業である「リーダー・コーディネーター養成講座」の運営スタッフとワークショップの参加者の二つの立場を兼ねて関わらせていただきました。スタッフとして運営の準備や打ち合わせを進めるうち、「このワークショップで社会課題解決の為に人を動かすことのできる力を身に着けたい!」という目標が私の中で明確になっていくのを感じていました。

ワークショップに参加した感想は?

2日間のワークショップを通して、『関係構築』に関する学びが私にとって一番印象に残っています。
コミュニティを作り上げる際、お互いの「価値観」を知り、資源を交換しながらパワーを増幅し、自分1人ではできなかったことが可能になったり、思いもよらないひらめきを生み出すことができるということを論理的に理解し、納得することが出来ました。また、ほぼ全員が初めて会う方ばかりだったにも関わらず、2日目には強い団結心で結ばれていたことで、はからずも関係構築の効果を実感することになりました。

今まで参加してきたワークショップとの違いは何ですか?

私が今まで参加してきたワークショップの多くは『多様な参加者がテーマに沿ってアイデアを出し合いながら合意形成をはかる』というものでしたが、コミュニティ・オーガナイジング・ワークショップは『ワークショップの手法をワークショップで学ぶ』というような印象を受けました。単元ごとに講義形式で手法を学び、そのあとすぐに実践することで、経験を通して学習し自分のものにしていくという構成はとても新鮮で効果的に感じました。

コミュニティ・オーガナイジングを今後の活動にどう活かしたいですか?

 私が中間支援組織に属していることを強みに、このワークショップで学び実践した「目標達成のための戦略作りやチーム内での関係構築の手法」や「資源を活用してコミュニティの力を高めることが出来る」というひらめきを様々な活動団体の方々にお話し、広めていきたいと思っております。
 また、私自身も学んだだけで満足せず、実践を繰り返し、技術をさらに高めていきたいと思っています。

岡山市(ESD・市民協働推進センター)の主催によるリーダー・コーディネーター研修「コミュニティ・オーガナイジング・ワークショップin岡山2016」を開催しました。

2016年7月23日・24日に岡山県青年館にて岡山市(ESD・市民協働推進センター)の主催によるリーダー・コーディネーター研修「コミュニティ・オーガナイジング・ワークショップin岡山2016」を開催しました。

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岡山市内で活動する市民活動団体のリーダーをはじめ、大学生、大学講師、弁護士、地域おこし協力隊員など、様々な職業・所属の14名が2日間で約16時間に及ぶ研修にご参加いただきました。なお、岡山市ではコミュニティ・オーガナイジングを他者との協働の場面で生かしていただくことを想定していることもあり、岡山市(行政)との協働を志す方々のご参加が多く見られました。

研修の開始当初は聞きなれない言葉や経験したことのない進行(講義と演習の繰り返し)に参加者が戸惑う様子も見られましたが、時間の経過とともに全員の理解と集中力が増し、会場全体がほどよい緊張感に包まれていくのがわかりました。研修の最終盤にあたる「パブリックナラティブ」の演習では架空のキャンペーンに基づいているとは思えないほどの熱と説得力を持った発表がなされ、参加者全員が2日間の研修成果を実感することとなりました。

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参加者アンケートで寄せられたコメントを一部ご紹介いたします。

【感想】
「ハードスケジュールで疲れました。」
「明らかに一皮剥けた感があった。自身の閉じたアンテナが開いた感覚。」
【最も印象に残ったこと】
「最後にはコーチも参加者も一体感がうまれていた。また、皆の前で言うつもりがなかったことを話してくれた参加者の勇気が印象に残っている。」
「たくさんありますが・・・。1日目の終わりに、ストーリー・オブ・アスを共有したときです。」
【これからコミュニティ・オーガナイジング・ワークショップを学ぶ方への一言】
「使った時間は倍返しの経験で返ってくる実感が得られます。」
「ハードワークですが、主催者の方は参加者の力になろうと感動するくらい一生懸命サポートして下さいます。何かを動かしたい人、でもやり方がわからない人、色々考えず、受講して下さい!必ず動き始めます。」

岡山市でのコミュニティ・オーガナイジング・ワークショップは今回で3回目(3年目)になります。1回目、2回目の参加者が学んだことを生かして岡山市(行政)をはじめとする様々な利害関係者を同志として巻き込み、さらに活動を発展させていることから今回の参加者も同様にそれぞれの環境、立場で活躍されることを期待しています。なお、今回のワークショップ参加者には平成28年10月4日に開催する「課題解決ワークショップ」にて「パブリック・ナラティブ」を活用したテーマ提案(問題提起)を行っていただき、テーマに関心を持つ行政職員や市民とともに解決策を検討していただく予定です。

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レポート:高平亮(コーチ)

2016年8月20、21日の二日間、同志社大学今出川キャンパス(京都府京都市)にて、「“実現したい未来をみんなでつくるために” 『コミュニティ・オーガナイジング・トレーニング』 in 京都 〜市民一人一人のリーダーシップをはぐくむ実践的メソッドを学ぶ2日間〜」を開催しました

 1月末に続き、京都では今年二度目の開催となりました。NPO・社会福祉協議会・大学生や学生の労働問題に取り組む大学院生など、様々な方面で活躍されている方々、総勢17名に参加いただきました。 

 初日、朝から京都は蒸し暑く気温は30度に迫ろうという中、8時半の開場と同時に参加者の方が続々と到着しました。それぞれがこの二日間への期待と不安を胸に、トレーニングの開始を待ちます。

 9時になり、いよいよ二日間のトレーニングがスタート。初めに参加者とコーチが円になり、チェックインを行いました。一人1分で、日頃の活動や今の気持ちなどを共有します。

「普段は人と一緒に行うワークショップのようなものは苦手だが、思い切って参加した」
「二日間のスケジュールを全てキャンセルしてこの日に備えた」
などの声が聞かれました。

 そして、いよいよ講義が開始。導入は「コミュニティオーガナイジングとは何か」について。50分と長めの講義ですが、参加者の皆さんは適宜メモを取りながら、講師の問いかけにも積極的に答えていました。

 

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 導入の講義が終わると、チーム(今回はA〜Dの4チーム)に分かれて、コーチング、昼食を挟んで、ストーリオブセルフ・関係構築・チーム構築のトレーニングを行いました。COのトレーニングで重要なことは、“自転車に乗ってみること”。“質問とパラフレーズ”のみで行うコーチングや、自分の価値観をこれまでの経験に基づいて話すストーリオブセルフなど、初めて取り組むCOのトレーニングに戸惑いながら(そして、CO独特のタイムプレッシャーと戦いながら)も、参加者はそれぞれのモジュールに懸命に取り組みました。

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特に、お互いの資源と関心を交換する関係構築のモジュールでは、
「相手の関心や価値観にたどり着くことがとても難しかった」
「すぐにお互いの価値観を交換でき、関心と資源の交換までスムーズに至った」 

など、参加者それぞれが自分の得意な分野と苦手な分野をはっきりと意識するような場面もありました。

 1日目最後のモジュールであるチーム構築では、トレーニングを進めていくうちにチームに一体感が生まれ、チャント(チームに勢いを与える掛け声など)を各チームで披露するときには、一日のトレーニングを乗り切ったことへの達成感や充足感がどのチームにも漲っていました。

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 初日の最後は、全員で振り返りを行いました。

「自分がオーガナイジングするだけでなく、される側も体験することで、気づきが多かった」
「やっている業種や経験が違っていたので、話の核心に入るまでにすごく時間がかかった。どんな質問をしたら核心にはいれるのか」 

など、お互いの学びを共有しました。

初日の夜に行われた懇親会は過去最高の参加率でした。コーチも参加者も一緒になって、今日一日の振り返りや、自分が普段行っている活動の話など、話題が尽きず大変な盛り上がりを見せました。

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 2日目はストーリーオブアスから。17人の共通体験からいかに“私たち”を感じられるアスを語ることができるのか。“自転車に乗ってみる”一日がまた始まりました。二日目は初日とは変わって、チームメンバーがお互いに打ち解けて学び合いも増えてきます。ストーリーオブアスの後は、戦略を立てるモジュール。各々が取り組む課題をCOの戦略メソッドに落とし込み、大ゴールを設定し、戦略的ゴールを決め、それに向けてのキャンペーンを考えていきます。チームメンバーからのコーチングを受け、戦略的ゴールを設定し直したりキャンペーンを修正したりしました。

「どのように人々をオーガナイズするか」
「そのキャンペーンは同志の力を高めているのか」
など、コーチの鋭い指摘もありながら、徐々に戦略を固めていきました。

戦略の全体振り返りで、講師の方が言った
「戦略的ゴールを達成できないのであれば、それはキャンペーンとは呼びません」
という言葉には、社会を本当に変革していくためには戦略がいかに重要かということが表れていたように感じました。 

 二日間の最後のモジュールは、ストーリオブセルフ・アス・ナウを結びつけるリンキング。タイムプレッシャーの中、最後の力を振り絞って参加者17名がそれぞれのパブリックナラティブを作り上げました。モジュール終了後、各チームで隣の人に二日間の感謝を伝える“ありがとうの輪”を行ってチーム演習は終了しました。

 パブリックナラティブの全体振り返りは印象的なものになりました。参加者の一人が語ったパブリックナラティブに参加者コーチを含め全員が引き込まれました。普段語ることのない、けれどその人の価値観を作り上げることになった経験が語られ、その方のストーリーが一気に流れ込んでくるようでした。

 二日間の締めくくりは、全員で円になってのチェックアウトでした。二日間の学びの共有を一人1分で行いました。

「不安もあったが参加して本当に良かった」
「この学びを生かすためにも、落とし込みをしっかりと行いたい」
などの声が聞かれました。 

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 今回のトレーニングは、1月よりも参加された方は少なかったものの、前回と変わらぬ熱気が会場を包んでいました。また、今回は京都で活躍する2名が講義を務めたことも、この京都にCOが根付き始めていることを感じさせる非常に印象的なことでした。

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 参加者それぞれは活動の場が違っても、今回の学びを生かして、各々が取り組む課題解決が加速することを願っています。

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南本広大(サブコーチ

青木 克也

ワークショップに参加した動機

私は、関西圏の学生アルバイトを中心とした労働組合「関西学生アルバイトユニオン(かんユニ)」の活動に結成以来携わっており、労働相談や団体交渉、大学や高校でのワークルール教育などを行っています。
今日では、親世代の収入の減少や高額の学費負担といった経済的な事情から、多くの学生が学費や生活費を賄うためにアルバイトをする必要に迫られており、そのような学生を使い勝手の良い労働力として職場に強く拘束する「ブラックバイト」が大きな社会問題となっています。かんユニにも多くの相談が寄せられ、日々当事者の方々と共に解決に向けた取り組みを行っていますが、自身の問題が解決した後でなお組合活動に関わり続けるという方は非常に少なく、個別事案の解決を通した組織化に成功していないという問題意識を抱いていました。
そこで、労働運動にも広く取り入れられているというコミュニティ・オーガナイジング(CO)の理念や実践方法を学ぶことによって、私たちの抱える課題に対する示唆を得たいと思い、折よく京都で開催されたワークショップに参加しました。

ワークショップに参加した感想

COのワークショップでは、パブリック・ナラティヴのお手本となるいくつかの映像を視聴します。これらが本当に感動的で、スピーチが終わったときには思わず映像の中の人々と一緒に拍手をしてしまいそうになりました。
人の心を動かすスピーチには、人の心を動かすだけの(表現可能な)理由が必ずあります。それをまずは分析的に、次いで体系的に学ぶことができたのが大きな収穫でした。たとえ崇高な志を持っていても、聞き手に「準備」をさせないまま核心を話すだけでは、伝わるものも伝わらなくなってしまいます。自分の価値観をいかに相手と共有できるか――その観点からのストーリーの組立てが決定的に重要であることがわかりました。

今まで参加してきたワークショップとの違い

学部生の頃、国家公務員の立場で社会問題に取り組みたいと考えていた時期があり、中央省庁が主催するワークショップに何度か参加したことがありました。ほとんどのワークショップは、チームごとに議論して政策立案などを行い、それを発表して職員の方からフィードバックを受けるというオーソドックスな形式でした。良質な議論ができたことも少なからずありましたが、チーム内のさらに一部の人が主導で進める形になり、なかなか主体的に議論に参加できない人が出てきてしまうことが多かったです。
COのワークショップは、2日間にわたって行われるということもあり、多種多様な形式のグループワークを体験することができました。具体的には、1対1でのコーチングの練習、1人ずつチーム全員に対して語りかけるパブリック・ナラティヴ、ファシリテーターを交替しながら行うリーダーシップチーム構築などがありましたが、そのすべてにおいて、1人1人が時間制限に注意を払いつつ自分の頭で考え、発言するという主体的な関与が必須となります。これほどエネルギーを使い、かつ力のつくワークショップは初めてでした。

コミュニティ・オーガナイジングを今後の活動にどう活かしたいか。

上述のように、まずは自分の団体の組織力アップにつなげたいと考えていますが、それは新たな仲間を増やすというだけではなく、既存のメンバーのリーダーシップを強めることをも含めています。価値観を主軸としたCOの理念や、「ティーチング」と「コーチング」の違いなどについての認識を共有し、またメンバー1人1人がよりよく主体性を発揮できる組織にしていくための運営方法の改善にも努めていきたいと思います。

万波智美

ワークショップに参加した動機は?

直接のきっかけは、オーガナイザーという仕事に関心があったからです。高校生の時、文系と理系に分けて進路を選ぶことに違和感を感じ、両者の境目をつなぐ、プロフェッショナル同士をつなぎ、多くの人々と関わり合いながら一つの物事をゴールに導くような仕事がしたいと思うようになりました。社会に出たらそのような仕事はあるだろうとは思いましたが、当時は既存の職業の中に名前を見出せずにいました。

人や地域と関われる仕事を目指し、大学は文化マネジメントを専攻。美術評論家でありプロジェクト・プランナー、プロデューサーとして幅広く活躍されている先生のもとで国内や海外のプロジェクトに関わらせていただいたなかで、オーガナイザーという仕事があることを知り、自然と意識するようになりました。日本においてはまだ実践者の少ないオーガナイザーに、今回は実際に出会えるということも参加した大きな動機の一つでした。

 ワークショップに参加した感想は?

私は、仕事では主に「まちづくり」に関連した大小さまざまなプロジェクトの運営に携わっていますが、どのプロジェクトにおいても重要になることは、実行力と推進力を持ったチームづくりだと感じています。そのためには、関わる人々の関心や能力、それぞれの事情や関係性を見極めることが重要だと思っていますが、その見極めの際に「価値観」が大きな力を持つことを、ワークショップを通して強く実感しました。

ワークショップでは、個々の人々の奥底にあり、その人を形作る根底となる価値観を引き出す術をさまざまなワークを通して学ぶことができます。その体験は想像以上で、価値観を引き出し、実際のプロジェクトにコミットさせていくことで、こんなにも大きな力を生み出せるということを体感できました。価値観を引き出すことは一長一短にできるものではなく訓練が必要ですが、その方法について触れ、自身に応用力がついたことは大きな成果だと感じます。

 今まで参加してきたワークショップとの違いは何ですか?

ワークショップ終了後に、実際に自分たちでも振り返って実践できるように練られた適切な講義(座学)とワーク(実技)を繰り返すことで、自然とスキルが身についていくことが本ワークショップの特徴だと思います。チームのルールを決め、ゴールを描き、時間制限も取り入れながら、最後までチームでやりきり完走する、ということはどのプロジェクトにおいても基本になることだと思います。私が参加したプログラムは2日間をかけて行うものでしたが、始まりから終わりまで誰一人も脱落せず最後まで全員で走り切るということも体感できました。実際に、物事を組み立てる際に、組み立てられた!自分たちで出来たんだ!という一体感や実感を参加者に抱かせることはとても大切だと思います。さまざまな課題を通して、参加者それぞれに適切な実践力を身につけさせる、とても優れたワークショップだと感じました。

 コミュニティ・オーガナイジングを今後の活動にどう活かしたいですか?

コミュニティ・オーガナイジング(CO)は、さまざまな活動において応用することができる優れた技術だと思います。心(動機)と頭(戦略)と手(スキル)の意識がけやストーリー・オブ・セルフの実践、戦略の組み立て方など、個々の技術それだけでも優れた成果を生み出すことができる技術の固まりですが、それぞれを組み合わせることで更なる威力を発揮し、目的をゴールへより導くことが可能になると思います。

今回学んだ技術を糧に、プロジェクトに関わる人々のそれぞれの価値観にも目を向け、一人のリーダーが進めるプロジェクトではなく、またリーダーが疲弊してしまうのでもなく、皆で共に一つのゴールを目指して走り続けれるチームづくりを心掛けたいと思います。そして、プロジェクトをさらなる先につなげ、より高いゴールへ向かっていけるよう人々の力を組み合わせ新たな街のシーンを生み出し続けたいと思います。