宮下 知里

 

参加の動機

コミュニティ・オーガナイジングという言葉は、大学時代にソーシャルワークを学ぶなかでぼんやりとは聞いたことがありましたが、実際どういった技法なのかは全く知りませんでした。COとは具体的にどういうものなのか?自分の知識として得ることができればと思い、今回の参加に至りました。
 

参加した感想

どんなものなのかもイメージできなかったCOですが、活動にとても興味を持ちました。パブリック・ナラティブの文章を組み立てることは相当な根気と試行錯誤が必要ですが、ストーリー・オブ・セルフやアスを話すことは日常的にできそうなので、まずは少しずつ失敗しながら慣れていきたいと思います。
 

今までのワークショップとの違い

私がこれまでに参加したワークショップは、事例に対してのグループワークが多く、自分たちの住んでいる地域や組織として直面している課題を解決に導くような取り組みがあまりなかったように思うのですが、今回参加したワークショップはまずその課題から自分たちで掘り起こして設定していくという流れだったので、他のワークショップは大概その時点でプログラムが終了してしまうことが多いなか、こちらは内容の具体性や研修以降も引き続き取り組んでいけるようなWSだったと感じました。また、課題を設定する際にも、メンバー個人の興味や価値観を発表していくことでメンバーそれぞれが「日常的に課題だと感じていても自分一人ではアプローチしていけないような問題点や課題」を表面化できたことが、メンバー間の結束を強め、さらに各人がそれぞれに介入していけるようなWSの取り組みになったのかなと思います。
 

COを今後の活動にどう活かしたいか

 自分の職域にこだわらず、なにかソーシャルアクションを起こす、又は起こしたいと考えている人に対して協力していける立場でありたいと思うので、生活や業務の一端にでもCOを活かすことができれば良いと思っています。今回のWSに関しては、グループメンバーは職場が近距離にある者同士だったこともありよりピンポイントな地域の課題を設定でき、資源を活用したかなり具体的な取り組みを提案できたのかなと感じるので、この研修から発展させてさらに周囲を巻き込んで実践できたら面白いなと感じました。

2017年1月25日〜27日の3日間、内閣府主催「平成28年度 子ども・若者育成支援のための地域連携推進事業『青年リーダー研修会』」が開催されました!

2017年1月25日〜27日の3日間、東京都渋谷区国立オリンピック記念青少年総合センターにて、内閣府主催「平成28年度 子ども・若者育成支援のための地域連携推進事業『青年リーダー研修会』」が開催されました!

研修会は3年目となり、地域で活動を行う20代〜40代までの37人が参加し、合宿形式でパブリックナラティブを学びました。各都道府県から推薦を受けた参加者は、ガールスカウトやボーイスカウトの指導者を始め、地域活性団体のNPOスタッフや大学生など、所属団体や活動内容は多岐に渡ります。今、団体や地域で抱えている課題を乗り越えるために他地域の若者は何をしているのか、考えているのかなど、より地域を充実させたいという思いで参加していました。

 最初は、何を伝えたらいいのか、何が正解なのかわからないことからの不安が多く、緊張感が漂いました。「みんな初めてのことです。まずはやってみましょう。」と伝えると、「そうだ、みんな一緒なのだ」と感じ、グループの中で言葉が多く出てきました。1年間に200人近い人と会い、話を聞いて自分の中に物差しがあることに気づいた、小さい頃からやっていた活動で、輝く青年に憧れていたことが原点だと気付いた、学校で不登校気味だった時期に背中を押してくれるのは家族だった、と次から次へと言葉を出しては整理されていきました。

 ・今まで仕事にやる気が出なかったけれど、自分の原体験が地域で育ったことのしがらみや安心感だと感じ、エネルギーが湧いてきました。
 ・相手が感じ取っていることと自分が伝えたいことが一致して居ないことに気づき、共感を得る言葉などが見つかり、短くわかりやすく話すことを学べました。
などと参加者からの感想がありました。

 ワークショップの数日後、国立オリンピック記念青少年総合センターで、参加者の方と偶然会いました。二人して、駆け寄り、早口で「偶然ですね〜!」と声を高めました。これは、点と点が繋がった瞬間なのではないでしょうか。こういった点と点が線となり、他地域で頑張っている若者がお互いに刺激し合えることを期待しています。

レポート:川崎茜(コーチ)

山本 潤

ワークショップに参加した動機は?

2016年秋からはじまった性暴力の実態に即した刑法性犯罪改正を目指すビリーブキャンペーンに参加したからです。4団体が集まって9か月後の刑法改正を目指すハードでタイトなスケジュールでした。しかし、COJ代表の鎌田華乃子さんがちゃぶ台返し女子アクションとして参加され、コミュニティ・オーガナイジングの手法を用いてファシリテートしてくれたおかげで、難しいと言われていた刑法性犯罪改正を実現することができました。さらに刑法では初めてで、奇跡とも言われる3年後の見直し規定がつくという素晴らしい成果を上げることができました。そのような変化をもたらすことができるコミュニティ・オーガナイジングをぜひ学びたいと思い参加しました。

ワークショップに参加した感想は?

ビリーブキャンペーンと同じくらいハードでタイトな2日間のスケジュールでしたが、系統立てて進められるので、着実に理解が得られるような仕組みになっていたと思います。各グループに二人コーチがつくのですが、コーチにはかなりのスキル、資質も求められると思いました。ただ、コーチも一緒にチームに参加し、グループを作り、課題や困難を乗り越え共に成長していくのだという経験を得られました。初めから完成しているグループなどどこにもない。完璧な人に導かれるのではなく、共に学びながら前に進んでいくことこそ、コミュニティ・オーガナイジングの核となる思想なのではないかなと感じました。

今まで参加してきたワークショップとの違いは何ですか?

何分でチームを作り、何分でゴールを定め、何分で戦略を立てる。など、やることに比して時間が少なく、驚きました。しかし、ゆっくり考えてもやることが先延ばしになるだけのことが多いので、スピード感をもって、たとえ6~8割の内容だとしても進めていくことが、「これができた」という成果や達成感につながることを実感できました。

コミュニティ・オーガナイジングを今後の活動にどう活かしたいですか?

これまでも講演などで、セルフストーリーを語ることは多かったのですが、パブリック・ナラティブを学ぶ中で、人々の関心を惹きつけ、自分事にしていくことが大切だと学びました。私は6月16日に国会の参議院法務委員会の参考人として呼ばれ、その時にパブリックナラティブを語ることができました。聞いてくれた人たちから、パブリックナラティブで話した部分で引き込まれたとの感想を聞き、大きな効果を実感しています。今後も性被害当事者が生きやすい未来を目指して立ち上げた団体一般社団法人Springや、性暴力の真実を伝えられる報道を目指す性暴力と報道対話の会で、コミュニティ・オーガナイジングを用いて成果が得られるキャンペーンをしていきたいと思います。

天野 妙

ワークショップに参加した動機は?

私が取り組んでいるのは「待機児童問題」。今年の1月から「#保育園に入りたい!」とSNSでアピールするというキャンペーンを始めました。ツイッターや、インスタグラム、フェイスブックなどで広まり、東京だけの問題とされていた、待機児童問題が地方にも存在することが顕在化され、大きなニュースになりました。しかし、問題提起はされたものの、解決には至りません。そもそもこの問題が解決しない最大の原因は当事者が毎年入れ替わること。自分の子供が保育園に入れてしまうと「のど元過ぎれば熱さ忘れる」となり、課題解決には至らないのです。それ故40年待機児童問題は解決していないと言われています。当事者だけでなく、元当事者や、当事者以外の人がこの問題を課題と感じ、行動してもらうためには、どうしたらよいのか?常に課題を持っていました。そこで、COJに参加したことのある友人から、このワークショップへの参加を勧められました。私自身も市民活動の成功事例を含め、体系的に学ぶ必要性を感じ、受講することにしました。

ワークショップに参加した感想は?

「疲れた~!」と心の底から声が聞こえました。(笑)みんなが、「思考力が低下した!」と言って、無理やり血糖値を上げようと、チョコに群がっていました。理系の私にとって論理的に「なぜこのスピーチが心に響くのか?」という点を学ぶことにより、過去のスピーチで反響の良い場合とそうでない場合の違いが良く分かりました。またリーチした人たちに行動してもらうには、イメージだけでなく、具体的な出口を見せてあげなければいけないことも、新たな気付きとなりました。

また、戦略についての講義では、学ぶにつれ自分たちに足らないところが見えてきました。特に価値観の共有という点で私たちが同じと思い込んでいる価値観を言語化し共有する作業は自分の枠組みを広げ、小さな違いを認め合い、多様性による効果を享受できると改めて知りました。

今まで参加してきたワークショップとの違いは何ですか?

標準的なワークショップは座学→簡単なワークショップ→発表という流れで、参加者が主体的にかかわらない場合、学びの深さに個人差があると思います。しかしこのワークショップは一人ずつの発表や、ロールプレイングを行い、チーム同士で競争させる仕組みが組み込まれているので、個人の主体性が無理やり(笑)発揮させられ、参加者全員が学べると感じました。また時間がかなりタイトなので、理解して始めるというよりトライ&エラーで答えを出していくという「習うより慣れろ」方式です。

(考えるより前に)とりあえずやってみよう!ということを、「自転車に乗ってみよう!」と言って乗ったことのない、見たこともないような自転車に無理やり乗せられる感じです(笑)。それが、私にはあっていたように感じました。このワークショップを受けるとよい対象者は、変革を起こす目的で集まったコアメンバーです。コア6人全員で参加すると、より効果が高いと思いました。

コミュニティ・オーガナイジングを今後の活動にどう活かしたいですか?

今回学んだ“Story of self”は早速インタビューや取材の場で使っていますし、ビジネスの場でも“Story of us”は活かされています。待機児童問題の活動において”パブリックナラティブ”をコアメンバー全員にマスターしてもらいスノーフレーク構造をつくりたいと考えています。また、コアメンバーでワークショップを開き1年半を期間と設定した解決すべき課題の戦略的ゴールを設定し、活動を加速化させていきたいと考えています。

横山 優里

ワークショップに参加した動機は?

カンボジアのシェムリアップで「ものづくりを通したひとづくり」をコンセプトに活動しています。貧困層家庭出身の女性たち60名ほどを雇用し、2016年3月に立上げたSUSU(http://shop.susucambodia.com/)というファッションブランドの生産・販売をしています。私は、SUSUの立ち上げから担当し、現在は日本でSUSUの販売を広めることをミッションに活動しています。SUSUはただものづくりをしているのではなく、作り手の女性たちの成長をサポートし、また買い手の方へも商品を通して前向きなエネルギーを送りたいと考えています。SUSUを今後日本で展開していくにあたり、より多くの人の共感を得るためにどのようにコンセプトを深化し発信していくと良いのか、アイディアを探るためにワークショップに参加しました。

ワークショップに参加した感想は?

良い意味でボロボロになった二日間でした。自分のストーリーを語ることがこんなにも大変で、またリーダーシップを取るうえでの基本となるコーチングが想像以上に難しく、自分自身の課題が浮き彫りになった時間でした。ですが、このワークショップの良いところは、盛大に失敗する私自身を受け止めてくれる安心・安全の場の雰囲気があるという点です。また、知り合ったばかりのチームメンバーに対して、自分自身を開示していくことはなかなか勇気のいることですが、逆に今までの背景を知らない人たちに対して自分のことを話してフィードバックをもらうことで、新たな気づきも得ることができたように思えます。

今まで参加してきたワークショップとの違いは何ですか?

コーチとチームメンバーが時間の制約という厳しい条件の中で全力で課題に向き合うという点でしょうか。一見、何が他のワークショップと違うの?と思われるかもしれませんが、コーチとチームメンバー間の関係性、チームメンバー同士の関係性が、不思議なくらい強く温かく結ばれていると感じる瞬間がワーク中に多々ありました。それはきっと、COJの大切な要素である同志間の「価値観の共有」ができているからではと感じます。集まったメンバー一人ひとりが自分の活動に課題を持ち、どうにか状況を変えたい!と考えていて、チームを率いるコーチは、COを通してその解決を応援したいと考えている。チームの中で小さなコミュニティがオーガナイズされていたなぁと振り返ると思います。

コミュニティ・オーガナイジングを今後の活動にどう活かしたいですか?

正直、今後どのように活かしていくか綺麗な絵は描けていません。ですが、綺麗な絵を描く前にとにかく「自転車に乗ってみる」ことが大事なのかなと考えています。セルフ・アス・ナウの要素を盛り込んだPublic narrative、同志は誰なのか、大ゴールは何かー。2日間の講義とワークショップでの実践で得た経験と学びをもとに、自分の活動では何ができるのかとにかく実践してみたいと思います。

今回出会った素敵なコーチとチームメンバーとは定期的に会う機会を設け、実践していく中で起きた変化や新たな課題を共有しあえたらいいなぁと、そんなことを思っています。

COJメンバーからのメッセージ(代表理事 室田信一) 2017年6月ニュースレターより

 6月19日に開催された総会を経て、COJ発足から代表理事を務めてきた鎌田華乃子に代わり、私、室田信一がCOJの代表理事を務めることになりました。

総会にて(6月19日)

 鎌田は本年7月より拠点をアメリカに移し、ハーバード大学ウェザーヘッド国際関係センター日米プログラムの研究員として、日米のコミュニティ・オーガナイジングの研究活動に従事します。COJには引き続き理事として関わりながら、国際的な観点から日本のコミュニティ・オーガナイジングの発展に貢献してくれます。

 3年半前にCOJが発足し、3年前に法人格を取得してから、鎌田はCOJの代表としてこの組織の骨格を築いてきてくれました。まともな予算も収入源もない中で組織が立ち上がり、3年間で4人の職員(うち1名はパートタイム)を雇用するまでの事業規模になりました。

 コミュニティ・オーガナイジングはボランタリーなアクションが広がることでそれがパワーとなり社会に対してインパクトを生み出します。そのため、フルタイムの職員を雇用するということに対してCOJの内部で議論をしたこともありました。職員が事業を推進することで取り組みが進み、その取り組みに関わる人たち(同志)の力を必要としなくなるのではないかという懸念があったからです

 しかし、COJの取り組みを社会的によりインパクトのある取り組みにするためにも、そしてボランタリーに関与する人たちに余計な負担をかけることがないようにするためにも、組織の基盤を整えることが必要であり、そのためにフルタイムの職員を雇用してCOJは着実にその事業規模を拡大し、実績を残すことができてきたと思っています。過去3年間の実績は、COJのコーチや運営メンバーとして関与してくれた多くのボランティア・メンバーの力によるものでありますし、オーガナイジングの実践をする、ワークショップを受講する、祭に参加するなどして、COJの取り組みに関わってきてくださった方々の支えによるものでもあります。また、そしてそれを可能にしたCOJのスタッフと理事・評議員の面々の貢献によるものと思っています。

 私は、そうしたCOJの遺産を受け継ぎ、法人のミッションにもありますように「日本において、コミュニティ・オーガナイジングの実践を広める」ためにもこの歩みをより確かなものにしていきたいと思っています。そのためには、現場でオーガナイジングの実践をしている方々がCOJという資源を最大限活用できるように、実践伴走プログラムの充実を進めていきたいと思っています。その実践の原点となる、ワークショップの質の向上や、現場のニーズに応じた新たなワークショップ・プログラムの研究・開発にも着手したいと思います。そして、それらを可能にするためにも、これまで十分に着手することができなかった会員制度の見直しや、寄付の仕組みづくり、認定NPO法人格の取得の検討も視野に入れて組織の基盤を整えていきたいと思っています。

 過去3年間、時には厳しいご指摘をいただいたこともありましたが、COJに関わった多くの人からは、COJの存在意義を強く応援するお言葉をいただきました。そうした期待に応えるのはCOJの職員や関係者だけではありません。COJを公共の財産と捉え、この財産をみなさんで活用して、日本の社会を少しでも私たち市民が望むものに変えていきましょう。引き続きのご協力をお願いします。

6分間キャンペーン(ニスリーン・ハジアマドさん/ヨルダン)

普通の人々が共通の目標に向かって力を合わせることで変化を起こすコミュニティ・オーガナイジング(CO)。今回はヨルダンの私が大好きな事例をご紹介したいと思います。読み書きも大変だった人々がリーダーになり、地域課題の解決に立ち上がったのです。

◆パレスチナ難民の力を上げたい

 2008年にアメリカのハーバード・ケネディ・スクールでマーシャル・ガンツ博士からCOを学んだパレスチナ人女性ニスリーン・ハジアマドは、パレスチナとイスラエルの紛争解決をする組織で弁護士として活動していました。なかなか進まない紛争解決に法律面からのアプローチに行き詰まりを感じ、アメリカに留学。そのとき、COに出合いました。

 ニスリーンはCOでパレスチナ人に力をつければ、紛争解決の一助にできるのではと、拠点であるヨルダンに戻り、活動家に教え始めました。そして、10年に「ジャバル・アル・ナティーフ」というヨルダンにある5万4000人のパレスチナ難民のコミュニティを支援するNGOルワードと出合い、彼らとともにCOを実践することで難民コミュニティの問題を解決しようとしたのです。

 パレスチナ難民コミュニティである「ジャバル・アル・ナティーフ」は、狭小で劣悪な住居、若者の高い失業率、学校からの高い退学率、平均より低い識字率、薬物使用、家庭内暴力というさまざまな困難に直面していました。ただ難民たちにとっては、一部の男性がリーダーで自分たちは従うだけ、サービスを受け取ることが当たり前となり、自分たちで問題を解決しようとはしていませんでした。NGOとしてコミュニティに関わり始めたルワードに対しても、当初はサービスの提供を期待していました。NGOルワードは、「これでは難民たちにいつまでたっても力がつかない」ということで、ニスリーンと協力し、難民たちが自分たちの困難を解決できるように、自ら立ち上がって支援する方向にシフトしたのです。

 まず、彼らが何に苦しんでいるかを深く探っていきました。そうすると、多世代にわたって識字率が低いことがわかりました。男性は工芸や肉体労働が主な収入源で、女性はほとんどが専業主婦で学校を早くに辞めてしまうそうです。読み書きができないことで親たちは自信を失い、子どもたちに読書の楽しみを伝えることができません。そして、学校の試験のための読書しか経験していない子どもたちにとっても、読書は苦痛なものになっていました。

 そこで、毎日6分間楽しみのために読書をすることを、住民の10%にあたる5000人が誓い合うという、COキャンペーンを立ち上げました。それによって、地域の識字率を上げ、自分たちの力で課題を解決する能力を培うことにしたのです。この「6分間キャンペーン」と名付けられた活動が始まったのは、10年11月のことでした。

 キャンペーンを主導する中心チームには住民が半分以上を占めるようにし、住民自身がリーダーシップを発揮できるようにしました。その中心チームから、母親チーム、若者チーム、図書館司書チーム、女性教師チーム、男性教師チームが立ち上がりました。各チームがさらにサブチームを作ることで人々をオーガナイズしていったのですが、本稿では最も成功した母親チームに焦点を当てます。母親チームは7人の母親から構成され、NGOルワードのスタッフがコーチとして寄り添いました。母親たちは11年1月に行われたCOのワークショップにて、自分がなぜこの活動に参加したのかという自分の物語を語りました。

「私はウム・ファディ、48歳です。私は小学4年生の時に、父に無理やり学校を辞めさせられました。私は日夜泣いていました。学校に戻してくれるよう父に何度も頼みましたが、父は許してくれず、なぜ学校に行きたいんだと言うばかりでした。学校に行っている友人が家に戻ると、私は彼女の教科書を借りて勉強しました。父は、私が15歳の時に35歳も年上の男性と結婚させました。そして子どもを産みました。私が取り上げられてしまったものを、どうしたら子どもたちに与えることができるかと、とても難しく感じていました。でも子どもには、私ができなかったことを達成してほしい。このキャンペーンは私に教育を取り戻させてくれるものでした。なので、全力をもって取り組みたいと思っています」

 そして母親たちは5000人が毎日の6分間読書を誓う目標のうち、1000人を母親チームの目標に決めました。

「彼女たちは目標を達成するのは難しいと知っていました。市民運動に対する心的なバリアもあります。でも彼女たちは自分たちで戦術を考えたんですよ」とニスリーンは言います。母親たちが考えたのは、7人のメンバーが5~7人の母親を誘い、誰かの自宅でアラビアコーヒーを飲みながら、毎週の良かった本について話し合うことでした。そして、母親はおのおの自分が読んだ本を記録して、本のコレクションを作り、それを後日「母の読書集」として編さんしようと、決めたのです。そのコーヒー読書会のメンバーたちが、毎日6分間読書を誓ってくれる人を増やす活動をしました。

 7人の母親たちは毎週ミーティングをしました。そして、それぞれがメンバー以外の母親との一対一のミーティングを重ね、サブチームを作れるように次々と母親たちを誘っていきました。しかしすぐに壁にぶち当たりました。ほとんどの母親が非常に少ない人脈しかもっていなかったのです。彼女たちの知り合いはごく近所か親戚に限られていました。また公的な会議に参加したこともなく、議題を作ったり、ミーティングを仕切った経験もなかったのです。また、小学校や中学校で学校を退学させられた母親たちに、COの概念をすぐに理解させることは困難でした。COの理解は毎回のミーティングでしっかりと振り返りをすることから生まれます。毎回の振り返りを大切にしつつ、月一回のキャンペーンミーティングで少しずつ概念を理解し、チームコーディネーターが会議のファシリテーション技術を母親達に教えながらその困難を乗り越えていきました。

 そして、11年7月には730人が6分間の毎日読書を誓い、73人の母親がオーガナイザーとして活動することになり、350人の母親がコーヒー読書会に参加したのです。さらに、オーガナイザーとなった母親たちは時間管理、会議の司会、コーチングや関係構築スキルを身につけ、強い、個人の関係性を築いていきました。「識字レベルを引き上げることよりも、彼女たちの社会的レベルを引き上げることに、このキャンペーンの価値があったと思います。」とニスリーンの同僚マイスは言います。

「チームメンバーの一人、ウム・サラーは15歳の時のある晩、通学鞄を枕の下において寝たのですが、翌朝になるともう学校には行けないと言われました。その後、3人の男の子の母親となった彼女は、子どもたちに文字が読めないことを知られるのが怖く、学校の宿題を家でみることが困難だったと、彼女の物語を語ってくれました。キャンペーンの終わりにはウム・サラーは母親チームのリーダーになっただけでなく、彼女の物語に共感した母親たちがたくさんチームに加わり、彼女たちの恐怖を行動に変える触媒となったのです」

 12年1月15日、母親チームの73人のオーガナイザーはキャンペーンの成功を祝っていました。彼女たちは1739人から読書の誓いを得て、3400の記事や本が全体で読まれたのです。そして、キャンペーンの期間中に母親たちが書いた、刺激や励みを与えてくれる文章が、冊子にまとめられました。チームメンバーは最後に、この活動に参加しなかった母親5人に冊子を渡すことで、さらに読書の素晴らしさをコミュニティ内に広めようと誓い合い、新旧メンバーに350冊の冊子が配られました。

 母親チームがこのキャンペーンでもっとも成功したのですが、全体では160人の住民がオーガナイザーになり、23のサブチームができ、5042人から読書の誓いを得ることができました。そして6620の記事と本が読まれたのです。素晴らしい成功ですが、実際にコミュニティの識字率や生活習慣に変化があったのかが気になるところです。

 ニスリーンは「メンバーから聞いている話としては効果があったと思います。また、住民は『読書を誓う』ことを非常に真剣に受け止めていました。でも長期的に行動に変化が起きたかどうかは明白な評価方法を作れていなかったのでわかりません」

 しかし、このキャンペーンの何よりの成果は、今までごく近所の人しか知り合いがいなかった住民が、知らない人々の間に関係を生み、自分たちで行動して解決する能力と自信を得たことでしょう。「ジャバル・アル・ナティーフのコミュニティが一体となり変化を起こす自信があるか」という問いに対して、オーガナイザーのなんと96%が「自信がある」と答えたそうです。そして培われた土台は、次に家庭内暴力をなくすための新たな取り組み「安全な家キャンペーン」を始めることにつながりました。

 私はCOを大学院で学んだ際、社会運動の多くは今まで解決されていなかった困難な課題に取り組んでいくために、失敗したり得たいものを勝ち取れなかったりすることが多くて、失望してしまうのでは、という疑問を感じていました。どうしてもその疑問を払拭できず、授業後に教室を去っていくガンツ博士に詰め寄りました。

 そうしたら博士はこう答えました。「次につながる土台を作るのがCOでは重要。たとえ負けても、今までになかった人とのつながりが生まれ、リーダーシップが育まれ、一緒に行動できる能力が上がっていたら、次は勝てる可能性が上がり、大きなことに取り組めるようになるのです」

 最後にニスリーンはリーダーシップを育み、コミュニティがパワーを発揮できる土台を作ることができたと確信した時のエピソードを話してくれました。

「キャンペーンの成功を祝うイベントで、8歳の女の子が私に近寄ってきたの。彼女は『毎週木曜日に学校でトイレ掃除をさせられるのだけど、用務員の人は何もせず座って電話しているばかりなの。私はCOキャンペーンを立ち上げたくって! あなたに話すように言われたの』と言いました。私はなぜ彼女がキャンペーンとCOを知っているのかと聞くと、『私のお母さんは6分間キャンペーンのメンバーだったから』と言ったのです。私はすごく希望を感じました」

 今回はヨルダン、パレスチナ難民コミュニティの事例をご紹介しましたが、大変な現実を前にしても自分たちの課題解決のために立ち上がることを決断した方たちには、とても勇気づけられます。しかし日本でも似たような状況があるのではないでしょうか。地域では一部のリーダーの声が大きく、女性や若者は従うだけ。自分たちが何かを変えられるとは思っていない。地域には問題が山積しているのに、人々は誰かがなんとかしてくれると思っている。ヨルダンの事例からは、一見無力でリーダーにはなれそうもない人でも、きっかけと学んでいく姿勢さえあれば、リーダーシップを発揮できるようになるということがわかります。そしてそれが積み上がることで、大きな変化を起こすことができるようになります。日本でも、6分間キャンペーンのような変化が各地で起きたなら希望のあふれる国になると思います。

本記事は、情報・知識&オピニオン「imidas」での前代表理事 鎌田華乃子の連載「ハーバード流!草の根リーダーの育て方」より転載しています。

まんまるママいわて(佐藤美代子さん)

コミュニティ・オーガナイジングでは、問題に直面していて、それを解決するために行動を起こす人を「同志」と呼んでいます。英語ではConstituencyで、「有権者」と辞書には最初にありますが、ラテン語源をみるとCon=共に、Stituent=立ち上がる、という意味だそうです。

 今回はコミュニティ・オーガナイジング・ジャパンが伴走したお一人、岩手県の助産師、佐藤美代子さんの実践例をみながら、彼女がどう同志と向き合ったのかをみていきたいと思います。

◆当事者目線の産後ケアが必要

 佐藤さんは岩手県中部地域(花巻市および北上市)で主に活動する助産師さんです。助産師という職業を超えて、母親たちが子育てを助け合う取り組み「まんまるママいわて」(http://manmaru.org/)を2011年から始め、当初は東日本大震災の被災地を中心に、子育てに悩んだ母親が助産師に気軽に相談に来ることができるサロンを運営していました。現在はその活動が広がり、母親たちと花巻で産前産後ケア施設を開こうとしています。なぜそうした取り組みを始めたのか伺いました。

「母親たちは、現在、核家族化が進む中、家族・地域の協力を十分得られないままに、妊娠・出産・育児をしています。私自身も二人の子どもがいるのですが、『助産師という職業なのに子育てが大変と言っては、ママ失格』と思い、孤独に育児をしていました。特に第一子の時は、産後うつになる一歩手前でした。家族にも地域にも頼れず、病院や家庭で心身のケアを十分に受けられなかったママたちは、不安な気持ちで子育てをしています。それが自信のない子育てにつながり、ひいては「虐待」や「産後うつ」などにもつながっていきます。

 しかし、そんな状態でも「大丈夫だよ。ママ頑張っているね」と存在自体を認めてくれる人に出会い、そっと肩を抱いてもらえると、心が大きく解きほぐれ、女性は安心して子どもと向き合えるようになります。私の場合は、助産師研究会で毎回会う助産師たちがその役割をはたしてくれました。「赤ちゃん、だっこしておいてあげるから、ゆっくりしてなさい。いつも大変でしょう」と言ってくれたとき、どんなに救われたか……。そうした経験や、被災地でのママたちへの支援活動を通じて、産前・産後に困難な状態にある母親が「同じような思いを共有し認めてくれる存在」に出会ったとき、自身の子育てに希望を感じるということがわかりました。また、そのような出会いに恵まれたママは、同じような思いをしている他のママに対してもケアをしようとすることもわかりました。産婦人科の過疎が進み、里帰り分娩(ぶんべん)をしても、実母はまだ現役で仕事をしているため、日中は母子のみで過ごしたり、実母が「今と昔は違うだろうから」と育児の手助けをしなかったりすることが増えてきました。日本独特の里帰り分娩そのものが意味をなしていない現在の環境で、『当事者目線の産後ケア』は、ママたちに希望を与え、元気な育児をしていくパワーの源になると考え始めました。少子化対策が叫ばれながらも、特効薬となるような政策はなく、母親のうつ病や子どもの虐待死が日々報道される中、当事者目線の産前産後のケアは今取り組むべき緊急の課題だと思います。」

◆「同志」とは誰か?

 佐藤さんはコミュニティ・オーガナイジングに出会って、人を増やすことで活動の輪を広げていくことを知り、「これだ!」と思ったそうです。しかし、問題に直面している当事者が同志になる、行動を起こす中心的な存在になるとは思えなかったそうです。

 ハーバード大学でマーシャル・ガンツ博士はオーガナイザーが問うべき三つの質問があると強調しています。彼の言っていることを紹介しましょう。

「一つ目にオーガナイザーが最初に問うべきことは、『私の取り組む問題はなにか?』ではなく、『私の人々は誰なのか?』(誰が私の『同志』か?)である。あなたがオーガナイズしたい人々、『同志』を明確にしよう。彼らはどんな価値観を、関心を、困難を、資源をもっているのか。彼らはなぜ、オーガナイズされることを望んでいる、もしくはオーガナイズされる必要があるのか?

 オーガナイザーにとっての二つ目の問いは、『私の抱える問題はなにか?』ではなく、『同志の問題は何か?』である。彼らの価値観、関心、資源が

明らかにされたとき、彼らはどんな困難に直面し、その困難は何に端を発しているのか、その問題が取り上げられなければ何が起こるのか、そして、それらが取り上げられたら世界はどのようになるだろうか?

 オーガナイザーにとっての三つ目の問いは、『どうしたら彼らの問題を解決できるのか?』ではなく、『どうしたら私の同志が困難に立ち向かい、ゴールを達成するために、彼らの資源を能力に変えることができるだろうか?』である。

 オーガナイジングの本当の仕事は、同志の中にある。オーガナイジングとは、今だけではなく将来にも、同志が自身の関心を効果的に主張するのに必要な力を発展させることができるようにすることである。このように、力がシフトしていくのだ」

◆当事者である母親たちの力強さ

 佐藤さんは「私は母親たちは弱い、守るべき存在だと思っていたんです」と言います。「どうしても同志が母親たちとは思えなかった」。ところが、活動を続けていくうちに「私も『まんまる』の活動を手伝いたい」という母親が増え、次第にそうした考えが変わっていったそうです。そして、当事者の母親たちが活動に加わることによってチームに変化が起きました。

「まず専門職4人だけのミーティングだったのが、人数が増えて、さまざまな意見が出るようになったんですね。そういう考え方もあるのか〜、という意見が当事者の母親のメンバーから出され、ミーティングをするたびに、新たに学ぶことがありました。そして自分に任された役割があると、誇りをもってくれる。

 定期的に岩手県内の各地でひらいていた母親たちが相談し合えるサロンは、当初助産師を中心に運営していたのですが、希望者にはママスタッフになってもらいました。彼女たちが参加者の前で『ママスタッフになりました』とすごく嬉しそうに言うんですね。任せること、って大事なんだなと思いました。

 私が、当事者の母親が同志だと思えた最も印象的な瞬間は、組織体制を見直し、副代表職を新たに探していたときに、母親メンバーの一人が進み出て副代表になってくれた時でした。組織の混乱も意に介せず、彼女は『こんなに多くの母親に勇気を与える活動なんだから広げていこう』と言ってくれました。『まんまる』の活動で救われた母親の一人だった彼女だからこそ、『まんまる』の活動の本当の価値を知っているのだと、そのときに気づきました。そして『母親は弱くなんかない、すごく強いんだ』と思うようになりました」

 佐藤さんは、一対一のミーティングをたくさん重ね、中心となるメンバーを増やしていきました。現在は拠点のある花巻だけではなく、遠野にもサロンを運営する5人のチームが立ち上がり、独自に動ける体制になっていく準備が整っていきました。釜石、大槌も自分たちでサロンを回せる自主運営体制を築きつつあるそうです。

◆当事者だからこそ生まれた戦略

 もう一つ佐藤さんの大きな気づきが、戦略の大切さでした。

「まんまるママいわて」では、活動を始めた11年当初から母親たちが気軽に安らげる産後ケア施設を作りたいと話していたそうですが、「宝くじがあたったらね……」ということで、それ以上具体的に話が進まないまま、会話が終わっていたそうです。

 ところが佐藤さんは、コミュニティ・オーガナイジングを学び、母親たちの力をうまく使う戦略を作ることができれば実現できるはず!と思い、最初は4人で、途中からは8人で月1回2時間のミーティングをし、戦略を立てていったそうです。

「まず、達成したい大きな目標を『地域で安心して子育てができること』と決めました。

 そしてそれに近づくために、まずは現在の組織体制で実現可能な週3日、母子が日帰りで産後ケア施設内で日中の7時間を過ごし、産後の体と心を休め、母乳ケアや沐浴の仕方を助産師や先輩ママから実地で体得できる仕組みを完成し、産後ケア事業を開始することを短期的なゴールとしました。明確な資金のめどが立たない中で不安もありましたが、『まず始めることだ』と思い、開始日を決めました。

 産後ケア施設は全国にたくさんできていますが、『まんまるママいわて』では東日本大震災以降に、日帰りで2時間の子育てサロンを何百回と行いました。その中で、産前産後に安心して相談できる場所が少ない岩手では、都会の産後ケアのやり方をそのまま岩手に持ってきても使えないということに気づきました。

 そこで、被災を経験し、当事者の気持ちがわかるママたちが、自分たちの経験を後輩ママたちと共有し、支え合えるケアを目指すという方針が決まりました。まさに「同志」が誰か気づいたからこその戦略です。

 短期的ゴールから逆算し、ゴール達成を助けるために、「産後ケア研究」(産前産後のママたちにグループインタビューをし、経験を共有することで産後ケアの意義を知ってもらう。その中から興味と思いの強い人を探し、産後ケア事業にママスタッフとして関わってもらう)を16年春に実施し、その研究を開始するために「シンポジウム」(産後ケアの必要性を行政、市会議員、県外のバースセラピスト、被災ママで語り、産後ケア研究に興味のある人を発掘する)を16年冬に実施することを決めました」

◆コミュニティ・オーガナイジングを取り入れた成果

 シンポジウムは盛況で予定人数30人のところ54人が参加し、現在は産後ケアのリサーチと準備を着々と進めているそうです。母親たちは、産休や育休を生かして短期間でも、お菓子作りや事務、おもちゃの掃除、自分のスキルを教える教室などで関われるようにすることで、より多くのママたちや地域の人たちが支えるケア施設にしたい、と語ります。

 今後は産前産後ケア施設をさらに拡大し、子育てひろばもやってみたいそうです。常時開設されていて、いろんな人が気軽に利用しやすく、子育てについて誰でも相談できる場です。「指導される」のではなく「寄り添ってくれる場」を岩手県内に広げていきたいと話してくれました。

 佐藤さんが約1年半にわたってコミュニティ・オーガナイジングを実践した経験を振り返ってくれました。

「最初は私とスタッフとで一対一のミーティングを行い、関係構築をするところから始めました。最初は『わけがわからないから、コミュニティ・オーガナイジングの人がくるのはいやだ』と言ったスタッフもいましたが、『美代ちゃんが習って、それをやるのはいいよ』と言ってくれて、スタートしました。

 それまではだらだらと時間を費やし、ミーティングの終わり方も、『やっぱりお金がないとできないね』などと、決まったのか決まらないのか、わからないままで終わっていました。しかし、この1年間、コミュニティ・オーガナイジングを実践することで、会議や活動のあり方が変わりました。今では、メンバーが増えながら、具体的な戦略を練ることができるようになり、実践してよかったと思っています」

本記事は、情報・知識&オピニオン「imidas」での前代表理事 鎌田華乃子の連載「ハーバード流!草の根リーダーの育て方」より転載しています。

LGBT成人式@埼玉(松川莉奈さん)

経験値ゼロから立ち上げてわずか半年で運営メンバー30人超のチームを組み「LGBT成人式@埼玉」を成功させた松川莉奈さんにお話を聞きました。

 2016年2月、埼玉県さいたま市のホールに138人が参加したLGBT成人式@埼玉が行われました。LGBTとは、レズ、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダーなど性的少数者を総称する言葉で、「LGBT成人式」は、年齢やセクシャリティに関係なく「なりたい自分になる」という意味で成人式を行うというイベントです。
 15年7月に今まで大きな活動をしたことがなかった二人で始まった活動が半年後に運営側30人超、参加者138人となるイベントになったのです。そしてイベントを開催することが最終目的ではなく、埼玉県でLGBTの人たちが集い、自分らしくいられる居場所作りなど必要な活動を続けていくコミュニティを作り上げることができました。
 どうしてそのようなことができたのでしょうか。成人式の実行委員長を務めた松川莉奈さんは、普段は児童福祉施設で子どもたちに勉強を教えていますが、「私自身は、いままで活動をリードしたことがなかったので、できるとは思いませんでした。でもコミュニティ・オーガナイジングを学んで、実践するうちに自分でもできる!と勇気が湧いていきました」と語ります。

◆行動のきっかけは自分の問題意識と仲間との出会いから
 松川莉奈さんはオンライン署名サイトのChange.orgとCOJが共催したワークショップ、チェンジメーカーズ・アカデミー(Changemakers Academy)に15年の5~7月に参加し、その後12月までCOJによる実践伴走支援を受けました。松川さんは自身の性に関する悩みや問題意識を持っており、このワークショップがジェンダー問題に関心を持つ人たち向けのプログラムだったために参加を決めたそうです。

「ちょうど1年前、東京で開かれたLGBT成人式に参加した時、スタッフの方がこう話していました。『今の仲間に出会うまで、ゲイは世界に自分一人だけだと思っていた』と。少しわかる気がしました。私も、『女らしさ』『男らしさ』という性別にあてがわれた社会での役割にずっと違和感をおぼえていて、『女らしくない』自分を好きになれませんでした。でもLGBT成人式という場が『ジェンダーロール(性役割)を気にしなくてもよい空間』であったことを経験し、その時間ありのままの自分でいられることの楽しさと安心感を知ることができたのです。
 自分の問題意識について色々と気づき始めた時、同じような苦しみを抱える人に何かできないか、と考えるようになりました。性に関する悩みは身近な人でも相談がしにくく、時としてその人を自殺に追い込むこともあります。LGBTの自殺未遂率は、LGBTではない人に比べて6倍だともいわれています(特定非営利法人ReBit制作『男・女だけじゃない! 先生がLGBTの子どもと向き合うためのハンドブック』)。そのような悩みを持つ人に対して、『あなた一人じゃないよ』と伝えていくことが緊急の課題であると考えます。
 では何をどこで行うかと考えた時、Changemakers Academyで共にチームを立ち上げた埼玉県出身や県内に住むメンバーが『埼玉県で何かやりたい』という強い想いを持っており、それがこのキャンペーンを始める大きなきっかけとなりました。メンバーの一人によると、埼玉県ではLGBT関連のイベントが多い東京へ行ってカミングアウトができても、地元に戻ると本来の自分を出せないということが多くあるそうです。カミングアウトは義務ではありませんが、自分が生きている場所で『ありのままの自分』を肯定し、それを祝福し合える空間があるといいかもしれない。そう思えたのは、私自身が沖縄という地方の出身だったからというのと、私がそのメンバーの想いに強く共感していたからだと思います。このような経緯で、LGBT成人式@埼玉を開催するに至りました」

◆二人じゃ何もできない! チームを作ろう!
 ワークショップで価値観を共有するチームメートを見つけた松川さん、組織の名前は「今動いていて、これからも進行していく」というイメージから「ing!!(イング!!)」と命名しました。しかし松川さんとチームメートとの二人では成人式を開催することはできません。コミュニティ・オーガナイジングでは中心から広がる形の組織作りを目指します。最初に立ち上がったチームがそこで終わることなく、次のチームが生まれるようにリーダーを育てていく、そして新たなチームが生まれたら、また次のチームを育てていく。中心から広がっていくような組織作り、雪の結晶ができていく様子にたとえてスノーフレークリーダーシップ を目指します。

 松川さんたちは企画全体の責任を持つ中心的なコア・チームを作りました。さらにそれとは別に、当日の企画を考えて実行に移すチームを立ち上げるために、手わけしてさまざまなLGBTイベントに参加し、「一緒に企画を考えてくれる人を募集しています」と人探しを始めました。「この人とLGBT成人式@埼玉を開催させたい!」と思えた人と松川さんたちとで会ってじっくりと一対一のミーティングをしていき、二つ目のチームであるLGBT成人式@埼玉実行委員会を作っていきました。途中、実行委員会の中にとても意欲的な人がいたので、コア・チームの条件「企画の全体を見渡して何が必要かを一緒に考えられること、週1回のコア・ミーティングに参加できること」をしっかりと確認した上でコア・チームへリクルートしました。

「メンバーを集める過程で大変役立ったのがコミュニティ・オーガナイジングで学んだ関係構築、一対一のミーティングです。相手がなぜLGBTの活動に関わっているのか、掘り下げて聞いていくとその方の生き方が浮かび上がり、大事にしている価値観が実感できます。そこで私自身の体験も伝えていくと価値観で結ばれた関係ができるんです。たとえチームに入ってもらえなくても、一対一ミーティングの時間はワクワクしました」

 しかし失敗もあったそうです。

「実行委員会は最初、『月に1度の実行委員会のミーティングに参加したことがある人』という条件で構成していて、参加する方の想いや考えなどは、特に話すことなく活動していました。しかし途中、メンバー内で成功イメージの齟齬(そご)が生じました。『有名人を出してたくさんの参加者を募りイベントを盛り上げる』か、あるいは「地味でも地元に密着したイベントにしたい」か。どちらもとても大切なことなのですが、価値観がきちんと共有されていれば、どちらを重要視するかという意見の相違は起こらなかったはずです。メンバーのリクルートについて振り返ると、その共有が少し甘かったことに気がつきました。そこでコア・メンバーが同席した上で再度一対一ミーティングを行い、軌道修正をしました。それ以降、実行委員となる人には一対一ミーティングをすることを必須にしました」

「この失敗から学んだのは、新たにチームに加わる人と価値観を共有し、また成功イメージやビジョンをしっかり共有することの大切さでした。逆にこの失敗以降は価値観とビジョンが共有できたので安定したチームを作ることができたと思います」

◆成功するチームの条件
 マーシャル・ガンツの教えるコミュニティ・オーガナイジングでは組織論も積極的に取り入れています。組織論の研究者であるハーバード大学リチャード・ハックマン教授は、うまく機能しているチームには三つの条件が備わっていると説いています。

 一つ目の条件は「チームに境界がある」ことです。境界とは誰がメンバーか明確なことを意味しています。しかし他者を排除するようなものではなく、新たに参加するにはどうしたらいいか、どんな時に辞めなければならないかのルールがあることです。二つ目は「チームが安定している」ことです。チームの活動が明確で、一定期間人々がしっかり関わることです。三つ目は「チームが多様性に富んでいる」こと。良い活動のために必要なスキル、能力、視点が適度に多様な形でチームであることです。

 また、建設的にチームを進めるために、チームを立ち上げて最初に決めるべきことを三つ挙げています。

 一つ目は「共有する目的」を設定することです。メンバーの共有する価値観と築いてきた関係に基づき、チームの目標や、誰と共に動き、何を行うのかメンバーが参加し、納得のいく形のものを作ります。二つ目はチーム全体で「ノーム(norm)という、意思決定方法や、会議方法などチーム運営をうまく行うための約束事を決めます。そして三つ目は「相互依存する役割」を決めることです。メンバーの強み、弱みを分析し、個々人の能力と成長したい分野に、チームの活動に必要な役割を合わせます。メンバーは助けが必要であれば求めることができ、すべてのメンバーが他の人の仕事の成功に関わることができる役割を考えます。

 松川さんの取り組みではコア・チーム、実行委員会、当日ボランティアというそれぞれのチームの境界をしっかり作り、参加条件を明確にしました。それぞれのチームのペースで週1回、月1回と定期的に会いました。当日ボランティアにはイベントの運営スキルを持った方がたくさん集まったそうです。そして共有する価値観に基づきビジョン(共有目的)を設定できたのも大きな成功の要因でしょう。

◆変化を起こした結果、コミュニティが作られる
 2月の成人式が成功に終わり、松川さんは現在、代表を降りて、メンバーの一人として活動しています。しかし、コア・チームがしっかりと立ち上がっているので、活動は継続しています。6月には映画上映会、そして大きなキャンペーンを今年またやりたいと考え、メンバーをこれからリクルートするところだそうです。松川さんはこう語ります。「私たちing!!は、個々の性指向や自分の求める性のあり方を表に出せずに孤独を感じている人でも、自分を肯定して生きていける社会を目指しています。成人式開催はゴールではありません。一つの過程です。成人式で培(つちか)った関係性とベースをもとに今年度、来年度とさらに活動を広げ、埼玉を一人ひとりが『なりたい自分』でいられる場所にしたいと思っています」

本記事は、情報・知識&オピニオン「imidas」での前代表理事 鎌田華乃子の連載「ハーバード流!草の根リーダーの育て方」より転載しています。

 

第2回「社協職員のための CO workshop」で一般参加枠を募集!

8月26日、27日に開催される「第2回社協職員のための CO workshop」(https://t.co/ssDSaEXzOp /主催;社協職員のためのCO workshop実行委員会)に「一般参加枠」を設けることが決定致しました!

参加費について以下の通り設定致しましたので、参加を希望される方は、上記のFacebookページや、サイトにてお知らせする「こくちーず」からのお申し込みをお願いします。当方よりお振込み先やWS詳細をメールにてご案内させて頂きます。

【参加費】一般:30,000円

【日時】
2017年8月26日(土)9:00〜19:30 開場:8:30
2017年8月27日(日)9:00〜19:30 開場:8:30
※2日間通してのご参加が必須です

【会場】同志社大学 今出川キャンパス

【募集人数】18名

(全体の申込状況によっては、追加募集をすることがあります。

※参加費のお振込をもって正式な参加確定とさせて頂きます)

【補足】
社協職員向けのWS自体は別予算での運営になっております。参加費設定が一般枠と異なっていますのであしからずご了承ください。お申込み後に、やむを得ない理由によりキャンセルされる場合は、問合わせ先までご連絡ください。

ご入金後にお客様のご都合によりャンセルされた場合、下記の通りキャンセル料金をいただきます。なお、返金の際の送金手数料はお客様負担とさせていただきますので、ご了承ください。

・7日前~4日前・・・・・参加費の50%
・3日前~当日、開催後・・・・・参加費の100%

※入金後のキャンセル、ワークショップの中止・変更について
お振込みいただいた参加費はワークショップに欠席された場合でもご返金はいたしかねます。運営上やむを得ない場合、参加者に事前通知なくワークショップを中止、中断できるものといたします。 その場合、可能な限りすみやかに当該ワークショップの参加費を全額または一部返金いたします。 ただし本実行委員会の責任は、支払い済みの参加費の返金に限ります。

CO関西ひろめ隊サポーターを募集!

ワークショップを開催したり、学びを深め合う場を創るためのサポーターを募集しています。1口1,000円より、募集しております。詳細は、下記のURL等を確認ください。

フェイスブックページ「CO×関西 for 社協」(@cokansaiforshakyo)

 サイト「CO×関西 for 社協」(http://cokansai-for-shakyo.jimdo.com/

【問い合わせ先】email hidden; JavaScript is required

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